医療では解決されなかったが…「あるもの」との出逢い
自分自身の行動をコントロールできなくなったり、記憶が飛んでしまったりすることもありましたし、死んだほうがいいのかもしれないという考えがよぎることもしょっちゅうでした。とてつもなく困っていたことは確実で、メンタルのサポートを必要としている状態です。
これはまさに、心身の反応が大多数の人たちとは異なっている、PSMだったのだと思えます。当時の精神医療ではほとんどできることがなかったでしょうが、それでもセンスのある精神科医やカウンセラーに巡り会って、援助を受けることができれば、もう少し肩の力を抜いて生きられただろうと思います。
当時はそのような専門家に出会うことはなかったのですが、運良く、自分のメンタルをサポートする方法に偶然出会うことができたことで、ひどい生きづらさから解放されることができました。
それは、書店で偶然目にとまった前衛舞踊家の写真集でした。自分も同じように、踊ることで救われるかもしれないと感じた私は、親に「大学に行く」と噓をついて家を飛び出し、上京したのです。
結局は前衛舞踊ではなく、クラシックバレエのスタジオに転がり込むことになったのですが、そこでバレエに打ち込んだことが、結果的に私が抱えていた精神的な問題の解決につながりました。バレエで養われる身体感覚で、自分を壊しかけていたエネルギーをコントロールするイメージを身につけることができたのです。
この経験から、人間の身体について体系的に学びたいと考えた私は、今でいう“アラサー”の年代から医学部を目指すことになりました。
私は研修医時代にダンスムーブメントセラピーという心理療法に出会って傾倒したのですが、それも私自身が身体を動かすことで精神的な問題から解放された経験から、かつての私のような課題を抱えるPSMの人たちの力になりたいと考えたことがきっかけでした。
PSMとして多数派になじめない暗黒の青春時代を送り、精神科医である父親からも、児童精神科の名医からも「助かった!」と感じられるような噛み合った対人援助を受けることはできませんでした。