「29歳で医学部入学」不登校・高校中退…“レールをはずれた”彼が、医師を目指したワケ【精神科医が解説】

「29歳で医学部入学」不登校・高校中退…“レールをはずれた”彼が、医師を目指したワケ【精神科医が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

年々増加傾向にある、精神疾患患者数。医療法人瑞枝会クリニック院長・精神科医の小椋哲氏は、自身もメンタルの問題による不登校、高校中退といった経験を経て29歳で医学部に入学しました。同氏が幼少期から大学入学を振り返りつつ、経験があるからこそわかる「精神医療に求められるもの」について解説していきます。

医療では解決されなかったが…「あるもの」との出逢い

自分自身の行動をコントロールできなくなったり、記憶が飛んでしまったりすることもありましたし、死んだほうがいいのかもしれないという考えがよぎることもしょっちゅうでした。とてつもなく困っていたことは確実で、メンタルのサポートを必要としている状態です。

 

これはまさに、心身の反応が大多数の人たちとは異なっている、PSMだったのだと思えます。当時の精神医療ではほとんどできることがなかったでしょうが、それでもセンスのある精神科医やカウンセラーに巡り会って、援助を受けることができれば、もう少し肩の力を抜いて生きられただろうと思います。

 

当時はそのような専門家に出会うことはなかったのですが、運良く、自分のメンタルをサポートする方法に偶然出会うことができたことで、ひどい生きづらさから解放されることができました。

 

それは、書店で偶然目にとまった前衛舞踊家の写真集でした。自分も同じように、踊ることで救われるかもしれないと感じた私は、親に「大学に行く」と噓をついて家を飛び出し、上京したのです。

 

結局は前衛舞踊ではなく、クラシックバレエのスタジオに転がり込むことになったのですが、そこでバレエに打ち込んだことが、結果的に私が抱えていた精神的な問題の解決につながりました。バレエで養われる身体感覚で、自分を壊しかけていたエネルギーをコントロールするイメージを身につけることができたのです。

 

この経験から、人間の身体について体系的に学びたいと考えた私は、今でいう“アラサー”の年代から医学部を目指すことになりました。

 

私は研修医時代にダンスムーブメントセラピーという心理療法に出会って傾倒したのですが、それも私自身が身体を動かすことで精神的な問題から解放された経験から、かつての私のような課題を抱えるPSMの人たちの力になりたいと考えたことがきっかけでした。

 

PSMとして多数派になじめない暗黒の青春時代を送り、精神科医である父親からも、児童精神科の名医からも「助かった!」と感じられるような噛み合った対人援助を受けることはできませんでした。

次ページしかし「人生とは本当に、何が起こるか分からない」

※本連載は、小椋哲氏の著書『医師を疲弊させない!精神医療革命』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

医師を疲弊させない!精神医療革命

医師を疲弊させない!精神医療革命

小椋 哲

幻冬舎メディアコンサルティング

現在の精神医療は効率重視で、回転率を上げるために、5分程度の診療を行っている医師が多くいます。 一方で、高い志をもって最適な診療を実現しようとする医師は、診療報酬が追加できない“サービス診療"を行っています。 こ…

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