(※写真はイメージです/PIXTA)

精神疾患患者は、年々増加傾向にあります。「集中力が続かない」ことなどを理由に自らに“発達障害”を疑う人も増えているようです。「病気」か否か、その境目はどこにあるのでしょうか。医療法人瑞枝会クリニック院長・精神科医の小椋哲氏が解説していきます。

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「精神病患者」の境目

精神科ユーザーは「精神病患者」「精神障害者」などと呼ばれますが、私はこうした呼称に違和感を覚えます。精神疾患には、正常と異常を明確に分けるボーダーラインのようなものはなく、その境目は極めてあいまいだからです。

 

近年は発達障害に対する一般の理解が広がってきているのは周知のとおりです。発達障害は、ADHDや自閉症スペクトラム障害などに分類されますが、私はいずれも「病気」ではなく「特性」だと考えています。

 

発達障害の特性をもった人たちは、集中するのが苦手だったり、時間を逆算できずに遅刻を繰り返したり、複数のタスクを同時進行させられないといった、さまざまな苦手分野があります。しかし、どんな人にも長所と短所があるのと同じで、発達障害の人も優れた得意分野をもち合わせているものです。

 

苦手なことだけをことさら強調されて社会的不適応のレッテルを貼られてしまうと、本人のショックや喪失感は大きく、社会的な差別にもつながってしまいます。

 

これはほかの精神疾患でも同じです。電車に乗るとパニック発作を起こす人はパニック障害と診断されますが、そこまではいかなくても立っていられなくなって座り込んでしまう人はいますし、途中で気分が悪くなって電車を降りる人、少し息苦しさを感じてしまうけれど、なんとか目的地の駅までたどり着ける人もいます。

 

要するに、発作による不適応が強い少数派の人たちをパニック障害と名づけて医療サポートの対象としているだけなのです。

 

精神疾患の患者は、多かれ少なかれ「スティグマ」に悩まされます。

次ページ「スティグマ」とは?5人に1人に当てはまる…

※本連載は、小椋哲氏の著書『医師を疲弊させない!精神医療革命』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

医師を疲弊させない!精神医療革命

医師を疲弊させない!精神医療革命

小椋 哲

幻冬舎メディアコンサルティング

現在の精神医療は効率重視で、回転率を上げるために、5分程度の診療を行っている医師が多くいます。 一方で、高い志をもって最適な診療を実現しようとする医師は、診療報酬が追加できない“サービス診療"を行っています。 こ…

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