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精神医療「主治医と地域スタッフの連携」の実態は…
厚生労働省は「かかりつけ医」の仕組みを推進しており、かかりつけ医の機能には、健康保険でもさまざまな評価が新設され、今後はほかの機関との情報共有や連携に対しても点数が加算されていくことが期待されています。
しかし、精神医療の分野では、病院とほかの地域リソースとの連携に対する評価は非常に低いと言わざるを得ません。
最初に紹介状を書く際だけは保険点数を算定できますが、その後の情報提供・共有に対しては、何も評価がされません。点数が算定されない仕事はどうしても後回しになり、結局やらないことが当たり前になってしまいます。
主治医と地域リソースの連携が手薄になると、連携することのメリットが失われるだけではなく、地域スタッフのモチベーションの低下という大きなデメリットを引き起こします。
デイケアで眠そうにしている患者を例に見ると、本来はこうした様子をスタッフが主治医に連絡して、適切な処置をとってもらうことが理想です。
しかし、医師側がこうした連絡を受けても迷惑そうに対応したり、対処を怠るとどうなるでしょうか。その患者はいつまで経っても日中の眠気が収まらないため、リハビリが思うように進まず、回復や社会復帰が遅れます。
患者がどんなに困っていたとしても、当然ながら医師の資格をもたないスタッフが「主治医に内緒で薬を減らしたら?」というアドバイスをすることは難しいです。スタッフは目の前の患者に対して何もしてあげることができず、無力感が募りますし、自身にできるサポートが限定されていると感じるほど、患者に対しての関心も薄れていきます。
さらに、デイケアは一定の時間、利用者にスタッフがついて特定のリハビリを行うことで、保険点数が算定される仕組みです。患者のリハビリがどの程度進展したかとか、社会復帰できたかどうかといった結果はいっさい評価されず、基準さえ満たしていればいいことになります。
結果として、効果的な援助にならなくても、基準を満たすスタッフが決められた仕事をして、何ごともなく時間が過ぎればそれでいい、という事なかれ主義的な考えに陥りやすい構造になっています。