うつ病は回復せず、“国の医療費”は膨張…精神医療が直面する限界【医師が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

患者の増加が社会問題化しているうつ病。復職を目指す場合のサポートは、病院ではなく地域のデイケアセンターが担うことになります。しかし、精神医療における病院とほかの機関との連携は進んでいないと言わざるを得ません。その現状について、医療法人瑞枝会クリニック・院長の小椋哲氏が解説していきます。

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精神医療「主治医と地域スタッフの連携」の実態は…

厚生労働省は「かかりつけ医」の仕組みを推進しており、かかりつけ医の機能には、健康保険でもさまざまな評価が新設され、今後はほかの機関との情報共有や連携に対しても点数が加算されていくことが期待されています。

 

しかし、精神医療の分野では、病院とほかの地域リソースとの連携に対する評価は非常に低いと言わざるを得ません。

 

最初に紹介状を書く際だけは保険点数を算定できますが、その後の情報提供・共有に対しては、何も評価がされません。点数が算定されない仕事はどうしても後回しになり、結局やらないことが当たり前になってしまいます。

 

主治医と地域リソースの連携が手薄になると、連携することのメリットが失われるだけではなく、地域スタッフのモチベーションの低下という大きなデメリットを引き起こします。

 

デイケアで眠そうにしている患者を例に見ると、本来はこうした様子をスタッフが主治医に連絡して、適切な処置をとってもらうことが理想です。

 

しかし、医師側がこうした連絡を受けても迷惑そうに対応したり、対処を怠るとどうなるでしょうか。その患者はいつまで経っても日中の眠気が収まらないため、リハビリが思うように進まず、回復や社会復帰が遅れます。

 

患者がどんなに困っていたとしても、当然ながら医師の資格をもたないスタッフが「主治医に内緒で薬を減らしたら?」というアドバイスをすることは難しいです。スタッフは目の前の患者に対して何もしてあげることができず、無力感が募りますし、自身にできるサポートが限定されていると感じるほど、患者に対しての関心も薄れていきます。

 

さらに、デイケアは一定の時間、利用者にスタッフがついて特定のリハビリを行うことで、保険点数が算定される仕組みです。患者のリハビリがどの程度進展したかとか、社会復帰できたかどうかといった結果はいっさい評価されず、基準さえ満たしていればいいことになります。

 

結果として、効果的な援助にならなくても、基準を満たすスタッフが決められた仕事をして、何ごともなく時間が過ぎればそれでいい、という事なかれ主義的な考えに陥りやすい構造になっています。

医療法人瑞枝会クリニック 院長 精神科医

1968年生まれ、鳥取県出身。
2005年熊本大学医学部医学科を卒業後、2007年東京大学医学部附属病院精神神経科に入局。
東京都立松沢病院、東京大学医学部附属病院(助教)、宇治おうばく病院などの勤務を経て、2015年瑞枝カウンセリングオフィスを開所。
瑞枝カウンセリングオフィスでの心理サービスを、精神科保険医療のなかでも展開するため、予約診療を自在に組み合わせた「瑞枝会モデル」を構築。
その実践の場として、2016年瑞枝クリニックを開業し、2018年医療法人瑞枝会クリニックに改組。
小学生時代に米国現地学校へ通い人種差別を経験。
中学では不登校となり児童精神科を受診、高校では精神的危機に陥り中退するなど、精神科ユーザーとしての苦しみに共感できる素地がある。

著者紹介

連載「精神科医が語る」医療現場の現実

※本連載は、小椋哲氏の著書『医師を疲弊させない!精神医療革命』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

医師を疲弊させない!精神医療革命

医師を疲弊させない!精神医療革命

小椋 哲

幻冬舎メディアコンサルティング

現在の精神医療は効率重視で、回転率を上げるために、5分程度の診療を行っている医師が多くいます。 一方で、高い志をもって最適な診療を実現しようとする医師は、診療報酬が追加できない“サービス診療"を行っています。 こ…

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