【関連記事】「天才だ!」大人驚愕…ADHDの少女が、志望校の面接で放った衝撃の一言【小児科医の実録】
ボトルネックを探る“ノウハウ”は体系化されておらず…
あるボトルネックが解消された場合でも、さらに生産性を上げようとすれば、別の工程で新しいボトルネックが発見されることになります。一つ解消したら終わり、ではなく、ボトルネックは次々と移動していきます。また、あとになって発見されたもののほうが重要で、問題が大きいということもあります。
精神科の対人援助の領域では、援助の質的向上のためにボトルネックの考え方を用いているケースは、私の知る限りありません。
かろうじて、患者の状況に応じて臨機応変に対応すべきだという一般論を記載しているテキストはあっても、ボトルネックをどのように探っていくかというノウハウは援助者に委ねられており、学問的に言語化されてはいません。
ボトルネックを把握する方法が体系化されていないのは、対象となっている人の心が工場のように整然と設計されているものでもなければ、俯瞰することもできないからです。身体をある程度調べ上げれば内科的な病気を発見することはできても、脳の働きや心の動きがそこに加わってくるとそれが極めて難しくなります。
そして、そのボトルネックを解消するためにどんな介入が考えられるかを、複数のフレームを用いて判断していきます。
精神科医が主に用いるフレームは、薬物療法、行動療法、認知療法、精神分析、トラウマ反応などがありますが、活用できるフレームが多ければ多いほど目の前の患者に適した介入を探し当てる可能性が高くなります。介入は複数考えられるので、優先順位をつけたり、併用したりすることも検討します。
当然、患者が納得できるよう説明し、患者自身が前向きに取り組めるよう援助することも重要です。
しかし、多くの精神科医や臨床心理士は、特定のフレームだけを活用して、そこから一部を評価するにとどまっているというのが私の考えです。
これは、真っ暗闇のなかにある工場の一部を、特定のフレームという懐中電灯で照らすような状態をイメージすると分かりやすいかもしれません。