「症状が治らない上に…」精神医療の悲惨な現状と医師が語る改善策 (※写真はイメージです/PIXTA)

精神医療における薬物治療は、医師にだけ可能な行為であるために、単に「薬を処方するだけ」となりがちであるのが精神医療の現実です。医療法人瑞枝会クリニック・院長の小椋哲氏は「精神科医の対人援助スキルが乏しい」と語ります。この記事では、精神医療の現場における「改善点」を同氏が提案していきます。

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「つらい経験を何度も話させられる…」情報伝達を改善

対人援助のスキルに乏しい精神科医と、得意とする対人援助のモデルが特定のフレームに限定されている臨床心理士という組み合わせでは、補い合ったとしてもカバーしきれないところがたくさん出てきます。

 

精神科医と臨床心理士の情報共有が不十分だと、その患者にとって重要な情報が一方だけに偏ってしまい、簡単に提供できる援助さえも提供できなくなるおそれがあります。

 

また、患者側にも、時間をとってくれる相手が臨床心理士である場合、精神科医に対してはあまり時間を取らせてはいけないといった意識が働くようにもなるので、ますます医師には重要な情報が届かなくなります。

 

これでは医師にしかできない薬物療法でさえも、正しく提供できなくなる可能性があります。

 

そもそも、精神科医と臨床心理士の役割分担は完全に病院側の都合です。

 

本来なら、同じ人物が必要な情報を聞きだし、ボトルネックを発見してそれを分かりやすく解説し、ボトルネックを解消するための選択肢を提示し、必要なら薬を処方し、生活上の具体的なアドバイスまですべてを担当してくれるほうが、患者にとっても都合が良く、安心できます。病院側にとっても、情報伝達や共有にかける時間や、すれ違いが起こるリスクを軽減できるメリットがあります。

 

また、心の問題を抱える患者に対する援助では、過去のつらい経験を話してもらうことで追体験が生じるケースも多いので、「同じことをまた言わされる」という事態はできる限りなくしていくのが望ましいはずです。

 

そこで、当クリニックの診療モデルでは、一人の医師が診察、診断、カウンセリング、投薬といったすべてのプロセスを担っています。

 

自費診療のみのカウンセリングオフィスには臨床心理士を置いていますが、保険診療を行うクリニックでは臨床心理士は置かずに、医療事務と受付を担うスタッフと院長である私とで運営する形を取っています。

医療法人瑞枝会クリニック 院長 精神科医

1968年生まれ、鳥取県出身。
2005年熊本大学医学部医学科を卒業後、2007年東京大学医学部附属病院精神神経科に入局。
東京都立松沢病院、東京大学医学部附属病院(助教)、宇治おうばく病院などの勤務を経て、2015年瑞枝カウンセリングオフィスを開所。
瑞枝カウンセリングオフィスでの心理サービスを、精神科保険医療のなかでも展開するため、予約診療を自在に組み合わせた「瑞枝会モデル」を構築。
その実践の場として、2016年瑞枝クリニックを開業し、2018年医療法人瑞枝会クリニックに改組。
小学生時代に米国現地学校へ通い人種差別を経験。
中学では不登校となり児童精神科を受診、高校では精神的危機に陥り中退するなど、精神科ユーザーとしての苦しみに共感できる素地がある。

著者紹介

連載「精神科医が語る」医療現場の現実

※本連載は、小椋哲氏の著書『医師を疲弊させない!精神医療革命』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

医師を疲弊させない!精神医療革命

医師を疲弊させない!精神医療革命

小椋 哲

幻冬舎メディアコンサルティング

現在の精神医療は効率重視で、回転率を上げるために、5分程度の診療を行っている医師が多くいます。 一方で、高い志をもって最適な診療を実現しようとする医師は、診療報酬が追加できない“サービス診療"を行っています。 こ…

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