(※写真はイメージです/PIXTA)

住宅金融支援機構が公表しているデータによると、現在、25人に1人が住宅ローンの返済に問題を抱えているとのこと。住宅ローン以外にも借入があり、収入も減って、支払いの目途が立たずどうしようもない…。そんなときの最もオーソドックスな解決方法は、「任意売却」です。ここでは、クラッチ不動産株式会社代表取締役・井上悠一氏が任意売却の「解決事例」を紹介します。

 

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「無益な差押え」…役所のかなり悪質な対応とは

Aさん〈交野市在住/職業:会社員/年齢:50代〉

 

○不動産……マンション

 

○家族………息子2人と3人暮らし

 

○住宅ローンの残額………1780万円

 

リストラにより収入がなくなり、消費者金融からの借入もあったため、住宅ローンの返済ができなくなったAさんが私に相談に来られたのは、すでに住宅ローンを滞納してから6ヵ月経過したあとでした。

 

幸いなことに競売はまだ申し立てられてはおらず、金融機関の担当者とも以前から顔見知りだったので、任意売却で進めることで合意が得られました。そして買い手も見つかり、無事、売買契約も終わって、1週間後に決済を控えたある日、市役所が差押えを行ってきたのです。

 

Aさんには、2年分の固定資産税の滞納がありました。金額にすると30万円程度だったので、事前にAさんから役所には自宅を売った代金で支払うことを連絡していました。にもかかわらず、役所は差押えを行ってきたのです。当然、1週間後に控えた決済はできず、すべてが振り出しに戻りました。

 

この差押えは「無益な差押え」(※)に当たるので、役所に解除するように何度も本人と一緒に掛け合いましたが、なしのつぶてでした。やっと連絡があったかと思うと、延滞税も含めて、1円単位まで売買代金から支払うように求めてきたのです。しかも、配分案に滞納税の支払項目を設けることも要求されました。

 

(※) 「無益な差押え」…滞納している税金を回収する見込みがない財産を差し押さえること。国税徴収法48条で禁止されている。このような財産を差押え・換価しても、滞納税の回収にはなんの役にも立たないため。

 

そこで配分案を練り直し、売却代金から捻出する予定だったAさんの引越費用20万円と、Aさん自身が引っ越しのために取っておいた10万円を支払うことで、なんとか差押えを解除してもらえることになりました。

 

役所が無益な差押えを行ってきたことで、決済日の変更だけでなく、配分案も変更せざるを得ず、住宅ローン債権者側の稟議のやり直しをするなど、余計な手間がかかってしまったのです。

 

Aさんのケースでは買主さんが事情をくんで、決済日の延期を了承してくれたので、任意売却そのものが不成立になることはなかったのですが、最悪のケースでは決済日が延期になることで任意売却が不成立になることもあるのです。

 

しかもAさんの場合、事前に役所に滞納税の支払いの連絡をしていたにもかかわらず差押えが行われたので、役所の対応はかなり悪質といえます。

 

税金の滞納がある場合は、任意売却が難航する危険性があることを念頭に置く必要があります。

 

ちなみに決済の日に、役所の固定資産税課の担当者2人がやってきたのですが、決済中、一人は携帯で動画を見ており、もう一人は居眠りしていました。その姿を見て、怒りを覚えました。

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※本連載は、井上悠一氏の著書『あなたを住宅ローン危機から救う方法』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

あなたを住宅ローン危機から救う方法

あなたを住宅ローン危機から救う方法

井上 悠一

幻冬舎メディアコンサルティング

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