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高級ブランドが配信したファッションショー
■意外な盲点があった
パンデミックが深刻化していた2020年9月、高級ブランドのバーバリーは、参加者4万人のユニークなファッションショーを開催した。マスクも手指の消毒液もソーシャルディスタンスも不要だった。どのように開催したのか。
実は「ツイッチ」を利用したのだ。現在、アマゾンが所有するソーシャルゲーム(SNS上で提供されるオンラインゲーム)のプラットフォームであり、ゲームをスポーツ競技として扱うeスポーツの一大拠点でもある。
実はバーバリーは、2010年に高級ブランドとして初めてバーチャルファッションショーを配信している。またツイッチでファッションショーを配信した最初のブランドでもある。バーバリーは、ツイッチ独自の「グループ配信」(画面を分割して最大4人のゲームの様子を同時配信する機能)を応用して、世界の観客に向けて複数の視点からライブショーを配信してみせたのである。
これには意表を突かれたが、もっと驚くのは、ゲームプラットフォームがEC事業に有効なチャネルだとはこれほど長い間、どのブランドも気づかなかったことである。
2017年にアマゾンはゲームプラットフォームをECチャネルとして利用するテストに乗り出した。ゲームプラットフォームでビデオゲームを購入可能にし、アマゾンプライムのような特典をツイッチユーザーに提供したのである。
現在、同プラットフォームは、月間ユニークユーザー数(同一ユーザーの重複訪問を除いた訪問者数)約1億4000万人を誇り、アクセス元の国は200以上の国・地域に及ぶ。全体としては、ビデオゲームプレイヤーは、世界で30億人ほどいると見られ、2019年第2四半期だけでも同プラットフォームのライブ配信コンテンツを実に27億2000万人が視聴している。
現在、ゲームプラットフォームで売買されるものは、大半がゲームで使われるパワーアップアイテムや武器、キャラクター用のアクセサリーなど、バーチャルなアイテムだ。
だが、これが現実の商品に広がるのは、時間の問題だろう。要するにゲームには、世界に非常に熱心な視聴者がいて、プラットフォームには交流や社会的な人間関係があり、圧倒的なコンピュータ処理能力も備えていて、ユーザーは高速回線で接続している。さらに、ツイッチでは、何かあるたびにユーザー間でコメントを書き込める機能があり、クチコミがあっという間に広がりやすい。見事に条件が揃っているのだ。
スクーティなどの企業がめざしているのは、こうした未来だ。マッシブ(ゲーム内広告プラットフォーム企業で、2006年にマイクロソフト傘下に)の創業者で、長らくマーケティングに携わってきたニコラス・ロンガーノのアイデアで誕生したスクーティは、ゲームメーカーがオンラインショップをゲームに組み込む機能を提供している。
「Gコマース(ゲーミングコマース)」ともいうべき新たな収益源になる。ゲームプレイヤーは、自分の興味・関心分野を説明するショッパープロフィールを作成するよう促される。すると、自分の条件に合った商品が提示される仕組みだ。