会場は騒然…嘘ニュース「アップルが銀行業界に参入」の衝撃度 (※写真はイメージです/PIXTA)

その瞬間、会場は静まり返った。ひきつった笑いを浮かべる人、一大事とばかりに必死の形相で会社にメールを打っている人もいる。ただ押し黙って、やや血の気のない表情の人も見える。会場全体が緊張感に包まれているのが、ひしひしと伝わってくる。※本連載は、ダグ・スティーブンス氏の著書『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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「アップル、銀行業参入を発表」にどんな反応?

■怪物企業が狙う新たな市場

 

もっとも、EC市場の参入、拡大のチャンスを首尾よく物にできたとしても、パンデミックが続くなかで、食物連鎖の頂点に立つ怪物企業が驚異的な利益を上げ続けていくためには、栄養が足りない。怪物企業が今後も成長を続けるための燃料を確保するには、まったく新しい高カロリーの栄養源を探し出さなければならない。単にランニングシューズや電子機器、家庭用品を売っているだけでは間に合わないのである。

 

そうなると、「次はうちの業界か?」と、どの企業も不安になるのだが、特に新規参入が閉め出されたまま寡占状態が続いている業界の既存企業にとって、厄介なことになる。

 

具体的には、銀行、保険、輸送、ヘルスケア、教育といった分野である。こうした業界は昔から自己刷新に消極的なうえ、新型コロナウイルスで各業界の弱点が白日の下にさらされている。そんな弱みを抱える企業があれば、食物連鎖のトップにいる怪物企業が新鮮な獲物を狙うように近づいてきて、飛びかかるタイミングを見計らっていてもおかしくない【図参照】。

 

【図】怪物企業とミニマーケット

 

■銀行・決済系

 

2018年、私はアメリカの銀行業界関係者向けに講演を依頼された。聴衆の大部分は、中規模の地方銀行の関係者だったが、業界大手の関係者の姿もちらほらと見られた。主催者からは「ちょっとしたショック療法」がほしいとのリクエストがあった。変革のメッセージをしっかり伝えたいのだという。なかなか難しい使命を仰せつかった。正直なところ、生まれてこの方、銀行にはずいぶんいじめられたから、仕返しの好機でもあった。

 

講演当日になって、自分で用意したプレゼンテーションとはいえ、その内容に「まずいことにならないだろうか」と少々神経質になっていた。今さら内容を変えるわけにもいかないので、意を決して壇上に向かった。もはや引き返すことはできない。果たしてうまくいくのか、大失敗か。運を天に任せた。ステージに上がり、いつもどおりに挨拶をして本題に入った。

 

「巡り合わせというのは不思議なもので……。今朝の新聞でご覧になった方も多いのではないでしょうか。ヨーロッパに住む友人からこんなものが送られてきました」

 

そう言いながら、最初のスライドを映し出した。CNNの臨時ニュースの見出しだ。実は私が仕込んだフェイクニュースである。

 

「アップル、銀行業参入を発表」

 

さらに、「こんなのも送られてきました」と言いながら次のスライドを見せた。『ニューヨークタイムズ』の紙面を写真に撮ったもので、こちらも「アップル、銀行開業」の見出しが躍っている。記事には「現金保有高600億ドル以上の同社は、銀行のあり方や使い勝手そのものを根本からつくり変えようとしている」といった説明が見える。

 

その瞬間、会場は静まり返った。ひきつった笑いを浮かべる人、一大事とばかりに必死の形相で会社にメールを打っている人もいる。ただ押し黙って、やや血の気のない表情の人も見える。会場全体が緊張感に包まれているのが、ひしひしと伝わってくる。

 

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小売コンサルタント

世界的に知られる小売コンサルタント。リテール・プロフェット社の創業社長。人口動態、テクノロジー、経済、消費者動向、メディアなどにおけるメガトレンドを踏まえた未来予測は、ウォルマート、グーグル、セールスフォース、ジョンソン&ジョンソン、ホームデポ、ディズニー、BMW、インテルなどのグローバルブランドに影響を与えている。著書に『小売再生 リアル店舗はメディアになる』(プレジデント社)など。

著者紹介

連載アフターコロナの小売業界の大激変と新潮流

小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」

小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」

ダグ・スティーブンス

プレジデント社

アフターコロナに生き残る店舗経営とは? 「アフターコロナ時代はますますアマゾンやアリババなどのメガ小売の独壇場となっていくだろう」 「その中で小売業者が生き残る方法は、消費者からの『10の問いかけ』に基づく『10の…

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