(※写真はイメージです/PIXTA)

慢性腎臓病(CKD)が進行すると、透析が必要な状態になります。早期発見が肝心なものの、腎臓機能が低下しても急激な症状はなく、「なんとなくだるい」と考えているうちに大ごとになっているケースが多いようです。慢性腎臓病と早期発見について、南青山内科クリニック院長の鈴木孝子氏が解説します。

合併症もさまざま…早期にCKDを見つけるには

腎機能の指標、GFR具合は悪くないとしても、体の中ではじわじわと病気が進んでおり、むくみなどの自覚症状が出る頃には、かなり進行してしまっています。したがって早期の段階でCKDを見つけるには、健康診断での検査数値が頼りとなります。

 

では検査で何をみるのか。キーとなるのは「GFR(Glomerular Filtration Rate)」です。GFRとは「糸球体ろ過量」の略で、フィルターの役目を果たす糸球体が1分間にどれくらいの血液をろ過し、尿をつくれるかを表します。

 

実際の検査では、血清クレアチニン値と年齢、性別から推算する、「推算糸球体ろ過量(eGFR:estimated GlomerularFiltration Rate)」が使用されています。eGFRの値が低いほど、腎機能は低下しているとされ、検査ではeGFR値の範囲によって6段階に分けて評価するのが一般的です。

 

なお、CKDの重症度はeGFRだけでは決まりません。糖尿病性腎症の場合なら尿アルブミン、腎炎の場合は尿たんぱくなど、原疾患によって見る項目が分かれ、それとeGFRとの総合で判断されます([図表1]参照)。

 

[図表1]CKDの重症度分類

 

GFRは加齢による自然な老化でも低下していきますが、GFR50mL/分/1.73㎡未満の患者さんは2倍以上の速さで腎機能が低下する、とのシミュレーションもあります。

 

このGFRは、心筋梗塞や脳卒中といった、命に関わる疾患(心血管イベント)の発症リスクに強い関係のあることが分かっています。GFRが低いほど、発症リスクが高くなるのです。GFRが30未満になると腎不全と呼ばれ、次のようなさまざまな合併症が出現しやすくなります。

 

●尿が出ない

●老廃物や余分な水分、ナトリウムなどが蓄積

●尿毒症

 

このうち尿毒症は、本来排出されるべき老廃物や毒素がたまることで起こる症状の総称で、症状としては[図表2]のようなものが挙げられます。

 

[図表2]尿毒症の症状

 

このなかでも、受診理由として多いのは、「高血圧、嘔気、頭痛、脱力感、食欲不振」などです。多くの方は、こうした症状がつらく感じられて受診されるのですが、すでに腎臓は健常な人の3割も働けなくなっており、しかも機能を回復させることができません。

次ページ「対症療法で緩和するしかない」状態に…

※本連載は、鈴木孝子氏の著書『「生涯現役」をかなえる在宅透析』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

「生涯現役」をかなえる在宅透析

「生涯現役」をかなえる在宅透析

鈴木 孝子

幻冬舎メディアコンサルティング

わが国で透析といえば一般的に、医療機関に通って行う「施設血液透析」のことを指します。 実際に9割の患者がこの方法で治療を受けています。しかしこの方法は、人間らしい生活が奪われるといっても過言ではなく、導入直後は…

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