(※写真はイメージです/PIXTA)

慢性腎臓病(CKD)が進行すると、透析が必要な状態になります。早期発見が肝心なものの、腎臓機能が低下しても急激な症状はなく、「なんとなくだるい」と考えているうちに大ごとになっているケースが多いようです。慢性腎臓病と早期発見について、南青山内科クリニック院長の鈴木孝子氏が解説します。

 

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「どうしてこんなになるまで」…気づきにくい腎臓疾患

そもそも透析をしないですむようにすることは腎臓内科医の使命です。つまり、透析の原因となる慢性腎不全をいかに予防するか、そして進行させないか、です。

 

腎不全には急性腎不全と慢性腎不全があります。念のため違いを述べておきますと、急性腎不全は、感染症や外傷などが原因で、急な機能低下が起こる病気です。手術や薬剤が引き金となる場合もありますが、いずれも、傷病が原因ならそれを治療するなど、原因を取り除くことで回復は可能です。ただし、予後が悪いと腎機能障害が残り、慢性腎不全へ移行する場合もあります。

 

慢性腎不全は一般的に、腎機能が正常な状態の3分の1以下に低下した状態を指しますが、それも含め腎機能の低下が3ヵ月以上続く病態を慢性腎臓病(CKD)といいます。

 

CKDはChronic Kidney Diseaseの略で、chronic=慢性、kidney=腎臓、disease=疾患です。慢性腎不全は、慢性腎臓病が進行して透析が必要になった状態を指します。しかしCKDの初期のうちに治療を開始できれば、透析を遅らせることができますし、透析を回避して人生を全うすることも可能です。

 

CKD患者の7割以上、透析患者の4割以上は生活習慣の乱れを背景とする糖尿病性腎症です。近年、DKD(Diabetic Kidney Disease)と呼ぶ動きもあります。糖尿病性腎症を重症化させず、透析導入をできるだけ遅らせる、あるいは回避することが、腎臓内科医にとって、ここ10~20年ほどの最重要課題になっています。そのためには、早期発見、早期治療が肝要です。

 

しかし現実には、「ええっ、どうしてこんなになるまで放っておいたの!」と思わず口調を強めてしまう場面のほうが多いのが実情です。初診で即、透析導入の判断を下したのも一度や二度ではありません。

 

腎臓機能が低下して、高熱が出たり耐え難い痛みが出たりしたら、皆進んで受診するのでしょうが、そういった激しい症状が出ないために、見過ごされやすいのです。なんとなくだるい、なんとなく疲れがとれない! 腎臓疾患では、そんな“なんとなく”が、病院へ行く判断を鈍らせます。

 

まして慢性腎臓病となると“なんとなく”が長い期間をかけて少しずつ少しずつ強まってくるので、体が慣れてしまい、大ごとだ、と思えなくなってしまうのです。「年のせいかな」「こんなもんだろう」などと思っているうちに、医師に呆れられかねない状態になるのがよくあるパターンです。

 

不摂生を自覚している人のなかには、うすうす「体調がいまひとつなのは年のせいでも疲れのせいでもなく、病気なのでは」と気づいている人もいます。そういう人は、いざCKDと診断した時「やっぱり」とあまり驚かないものです。

 

しかし、かといって、早く治療しなきゃと思っているわけではなく「そんなに大ごとではないから」「仕事が忙しくて治療に時間を取られたくないから」と消極的なのが気になります。

 

腎臓病がどれだけ生命を脅かすものか、また著しく生活の質を下げるのかが、まだまだ世間に浸透していないことを痛感します。危機感がないのです。

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    ※本連載は、鈴木孝子氏の著書『「生涯現役」をかなえる在宅透析』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

    「生涯現役」をかなえる在宅透析

    「生涯現役」をかなえる在宅透析

    鈴木 孝子

    幻冬舎メディアコンサルティング

    わが国で透析といえば一般的に、医療機関に通って行う「施設血液透析」のことを指します。 実際に9割の患者がこの方法で治療を受けています。しかしこの方法は、人間らしい生活が奪われるといっても過言ではなく、導入直後は…

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