血管がぼろぼろに…「腎不全」に至るまで
CKDの定義
①尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らか(特に蛋白尿の存在が重要※)
②GFR<60mL/min/1.73㎡
①、②のいずれか、または両方が3ヵ月以上持続する
※ ただし糖尿病性腎症のなかには、尿蛋白が出ないで腎機能が低下する病態もある。
CKDはどんな病気?
私たちは食事をすると、食べたものが分解され、ブドウ糖が小腸から血管内へと吸収されます。ブドウ糖は血流に乗って体のすみずみまで運ばれ、何十兆個とある体中の細胞のエネルギー源になります。
その細胞内へ、ブドウ糖を取り込ませる働きをしているのが、インスリンというホルモンです。ブドウ糖が細胞で消費されれば、血液中のブドウ糖は少なくなりますから、血糖は下がります。
インスリンは、すい臓にあるランゲルハンス島のβ細胞から分泌されるホルモンです。人の体内にはたくさんの種類のホルモンが分泌されますが、血糖を下げる作用をもつホルモンは、インスリンだけなのです。
そのため、インスリンが不足したり、うまく作用しなくなると、血液中にブドウ糖がとどまったままになってしまうので、血糖は上がってしまいます。糖尿病は、こうした高血糖の状態が続いて発症する病気、というわけです。
糖尿病はさまざまな合併症を起こす病気として知られています。腎臓病もその1つです。どうして合併症が起こるのでしょうか。
その黒幕となるのが、高血糖状態で蓄積されやすくなる、ソルビトールです。
ソルビトールとはブドウ糖からつくられる物質で、本来はブドウ糖→ソルビトール→フルクトースと分解されていき、排出されるのですが、糖がだぶついていると、ブドウ糖をソルビトールに変える酵素の活性が高まる一方、ソルビトールをフルクトースに変える酵素の活性が低下してしまいます。ソルビトールの状態では排出されないので、細胞内には大量のソルビトールがとどまるような恰好になります。
やっかいなことに、ソルビトールは細胞のなかにどんどん水分を引き寄せる性質をもっているので、細胞はさしずめ水びたしになり、やがて壊れてしまいます。こうして組織全体が傷害されて、機能が落ちてしまうのです。
ソルビトールが特につくられやすい場所は、末梢神経や眼の網膜、そして腎臓です。それぞれ、糖尿病の合併症としてよく知られている、神経障害や網膜症、そして腎臓病の発生につながります。
このうち腎臓では、血液をろ過して尿をつくる役割を担っている糸球体がダメージを受けてしまいます。そのために、悪い尿毒素が排出されず体にたまっていきます。体中を巡っている血液も、毒素で汚れたままの状態が続きます。さしずめ、ホースで泥水を流すとホースの内側が汚れてしまうようなもの。
血管の内側には内皮細胞と呼ばれる細胞がしきつめられ、血管を守っていますが、それが毒素にさらされれば当然、守りがおろそかになります。そのために血管が傷つきやすくなり、動脈硬化などを起こし、血管がぼろぼろになってしまいます。
このようにして、尿毒症と呼ばれるさまざまな症状が出てしまうのです。
糸球体は左右の腎臓それぞれ100万個もあります。少しくらいダメージを受けても、ほかの糸球体がカバーするのでさほど腎機能に影響は出ません。しかし、もし7~8割もの糸球体が機能しなくなったら、当然、残った糸球体に負担が掛かりますし、十分に機能しなくなってしまいます。こうしてやがて、腎不全になってしまうのです。