近年では結婚や離婚に伴うプレッシャーも少なくなり、本人たちの意思で比較的自由に行えるようになりました。しかし一方で、親族関係が複雑化し、相続の際にトラブルになるケースも増えています。夫婦の片方が再婚で、以前の結婚相手との間に子どもがいるケースを見ていきましょう。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
経営者の父が残した、価値ある不動産と高額な金融資産
今回のご相談者は、40代会社員の柏原さんです。昨年、柏原さんの父親が亡くなり、かなりの財産を相続しましたが、相続した財産の今後について、頭を悩ませているとのことでした。
柏原さんの父親はもともと地主の出身でしたが、ビジネスへの意欲が高い人で、複数の会社経営を成功させて多額の資産を築いたそうです。お見合い結婚だったという柏原さんの母親とは非常に仲がよかったそうですが、3年前に母親が病気で亡くなってから、父親は急に弱り、そのまま入院先の病院で亡くなってしまったそうです。
父親は、70代前半で会社をすべて売却しました。遺産は会社の売却で得た億単位の現金のほか、自宅、複数の収益物件、株、投資信託等でした。父親も現役のころから相続のことを気にかけていて、生前に遺産分割の方法を考え、納税資金の確保などもすべてめどが立っていたそうです。
「父は経営者でしたので、お金のことは抜かりなくやってくれました。本当に助かりました。僕は弟と2人兄弟ですが、いずれも母に似たのでしょうか、父のようなアグレッシブなタイプではありません。僕は一般企業の研究職に就いていまして、弟は大学の教員です」
柏原さんの相続した財産は、現金、株、投資信託、駅前の駐車場、そして亡き両親が暮らしていた実家です。現在は職場近くの賃貸で暮らしていますが、仏壇のある実家をしばしば訪れては、庭木の手入れをしたり、近隣に暮らす弟家族と集まって食事をするなど、くつろぎの場として活用しています。
「近いうち、賃貸を出て両親が残した自宅に移る予定です。僕も妻も、20分程度通勤時間が長くなりますが、残業もあまりありませんし、まあ問題ないかなと。ただ、気がかりなのは、僕が死んだ後の不動産のことなんです」
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株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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