大病の入院手術の際に手を貸してくれた同僚と、世話を焼いてくれた義理の甥に感激…。ひとり暮らしのシニア女性が、お世話になった方への遺贈を思い立ちました。しかし、確実な手続きを行わなければ、交流のない姪が相続人になってしまいます。どうしたらいいのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

孤独なシニア女性を助けたのは、同僚と義理の甥っ子

今回の相談者は、60代の山川さんです。山川さんは故郷の東北地方から進学のため上京し、そのまま都内の企業に就職。取引先の男性と結婚しましたが、夫にはもともと持病があり、それが原因で50代半ばという若さで亡くなりました。2人の間にお子さんはいません。以後、山川さんはずっとひとり暮らしです。

 

山川さんの両親はすでに鬼籍で、年の離れた兄も数年前に亡くなっています。山川さんはとくに家族と不仲だったわけではないそうですが、結婚前に両親を亡くしていたこともあり、そのまま兄とは疎遠になったといいます。兄には娘がひとりいますが、ごく幼いころに実家で2、3回姿を見た程度で、まったく交流はないとのことです。

 

山川さんは定年退職する少し前に体調不良を自覚し、病院にかかったところ、がんが判明しました。

 

「医師はあまりシビアなことはいわず、温かく励ましてくれるのですが、状況はあまりよくなさそうなんです。そうしたら、自分の今後と財産について、いろいろ心配になりまして…」

 

山川さんは長年会社勤めをし、それなりの預貯金があるほか、株や投資信託も保有しています。また、都内には自宅もあります。

 

「医療保険も入っていますし、病院代にそこまで大金がかかるわけではないと思っています。ですから、亡くなったあとも家や貯金は残ると予想していますが、それらを交流のない姪ではなく、助けてくれた同僚や、お世話になった夫の甥っ子に渡せたらと…」

不安な思いに寄り添い、親身になって助けてくれて…

病気が判明した際、職場の同僚の女性・田中さんがひとり暮らしの山川さんを気遣ってくれ、身の回りのものをそろえたり、手続きを手伝ってくれたりと、本当に温かく親切にしてくれたそうです。このときのサポートが非常にありがたく身に染みたため、そのお返しに、自分の財産の一部を田中さんに託したいと思っています。

 

また、亡き夫の甥である裕之さんにも、病気のときはもちろん、夫が健在のときから交流し、なにかと気にかけてもらっているので、やはり、財産を渡したいと考えています。

 

「病名が確定して手術が決まったとき、私はだれにもいわなかったのですが、同僚の田中さんが様子を察してくれまして。身内のように親身になって、あれこれ面倒を見てくれたんです。本当に涙が出そうなくらいありがたくて、うれしかったです。深刻な病名を宣告されて、不安でたまりませんでしたから…。私の両親も兄も非常にドライな性格でしたので、余計に人の優しさが身に染みました」

 

「亡き夫の甥っ子は、なぜか私によくなついてくれて、子どものときから交流があったんです。夫が亡くなったあとも気にかけてくれ、珍しいものが手に入ると、家に訪ねて来てくれたり…。入院したときは、同僚の田中さんと連絡を取り合って、あれこれと世話を焼いてくれました。優しくて本当にいい子なんです」

 

山川さんは、病気のときに手を差し伸べてくれたふたりに、何かの形で恩返ししたいと思い、自分が亡くなったときに財産を渡すことを決意しました。親族以外に財産を渡すにはどうしたらいいのかを調べるうち、筆者の事務所に行き当たったとのことでした。

 

注目のセミナー情報

​​【減価償却】11月20日(水)開催
<今年の節税対策にも!>
経営者なら知っておきたい
今が旬の「暗号資産のマイニング」活用術

 

【国内不動産】11月20日(水)開催
高所得ビジネスマンのための「本気の節税スキーム」
百戦錬磨のプロが教える
実情に合わせたフレキシブルな節税術

次ページ他人への遺贈を実現するには「事前の根回し」も重要

本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧