(※画像はイメージです/PIXTA)

継続的な病院の利用を示すロイヤリティを高めるためには、患者満足の向上が必要不可欠だという。患者満足はどのように向上させればいいのか。※本連載は杉本ゆかり氏の著書『患者インサイトを探る 継続受診行動を導く医療マーケティング』(千倉書房)の一部を抜粋し、再編集したものです。

患者満足の向上はより良い医療経営につながる

患者満足の測定の目的について、Sitzia and Wood(1997)は、①医療に関する患者の経験を理解する、②治療に対する患者の協力を促進させる、③医療における患者からみた問題を認識する、④医療の質評価、の4点をまとめている。

 

Jackson et al.(2001)は、①医療プログラムやシステムを確認する、②医療の質を評価する、③患者満足を改善するためにサービスに関するどの側面を変更する必要があるのかを特定する、④受診をやめる可能性のある患者を特定する、の4点を示している。

 

以上のように、医療の質評価、医療機関の運営に関わる問題点を探り当てることが患者満足測定の目的の中心となっている。

 

患者満足の向上は、結果として、より良い医療経営に繋がる。医療機関の経営にとって患者の獲得は不可欠であり、患者を固定客にし、継続的に受診させる施策を講じることは安定的な経営のための最重要課題である。

 

外来診療を中心とする診療所では、受診患者のうち、再来受診の患者が80%を越しており(山田,2015)、患者に繰り返して継続受診をしてもらうことは、長期的な患者の獲得を可能にする。一方、新規患者の獲得も医療経営にとって不可欠である。新しい患者の獲得のためには、患者に医療機関を認識して選択してもらう必要がある。患者は、医療機関を選択する際の情報源として、家族、知人からの意見・紹介、インターネットの情報を挙げている(鈴木,2011)。

 

この、家族、知人はどのように情報を入手するのかについて、診療所を対象とした研究では、患者満足の向上が家族や知人への推奨意向を高めることを明らかにしている(杉本ほか,2018)。つまり、患者に満足してもらい、家族や知人に推奨してもらう。その家族や知人は、患者からの情報によって医療機関を選択することが考えられ、患者満足の向上が結果として新規患者の獲得に繋がる。

 

患者満足の向上は、患者の治療にも影響する。患者満足は、患者の治療に対する協力の促進に繋がり、アドヒアランスが向上する(Sitzia & Wood,1997)。

 

例えば、満足している患者は、医師の指示に従い、診療予約スケジュールを守ることが報告されている。定期的な服薬を怠らず正確に実施することも示唆されており、患者満足の向上が、患者の治療に対する前向きな行動変容につながり、治療結果にも影響を及ぼす。特に、慢性疾患では、継続した治療が必要であり、それは往々にして、何年も治療に通う必要がある。そのため、患者満足度が高いほど治療を継続しやすく、治療成績にも好影響を及ぼすことが考えられている(真野,2010)。

 

したがって、患者満足の向上は、継続受診の患者を増やし、新規患者の獲得に必要な他者推奨を高め、医療経営に効果を発揮する。さらに、患者の治療に対するポジティブな行動に貢献する。患者、医療機関の両者にとって良好な結果を導くためには、患者満足の向上は欠かせない。

 

 

杉本ゆかり
跡見学園女子大学兼任講師
群馬大学大学院非常勤講師
現代医療問題研究所所長

 

 

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