「患者満足」を高める医療勤務環境改善
1.患者の満足を知ることは、医療機関にとって不可欠である
患者による医療の評価を知ることは、患者インサイトを探る手掛かりであり、患者の主観的感情である患者満足の検討は不可欠である。患者の信頼や愛着であり、継続的な医療機関の利用を示す、ロイヤルティを高めるためには、患者満足の向上が重要である。医療システムの機能を評価するためにも、患者満足は欠かせないことが指摘されている(Pascoe, 1983)。
厚生労働省では、2014年10月の医療法改正により、医療勤務環境改善マネジメントシステムに関する指針を定めて適用している。この医療法改正では、病院または診療所の管理者は、当該病院または診療所に勤務する医療従事者の勤務環境の改善、その他の医療従事者の確保に資する措置を努力するよう講じなければならないことが記述されている。
医療勤務環境改善マネジメントシステムでは、【図1】に示す医療機関の勤務環境改善により好循環サイクルが期待できると考えている。
・雇用の質向上により、人材の確保・定着、生産性の向上、スキルアップが行われる。
・医療の質が向上し、安全で質の高い医療が提供される。
・患者満足度が向上し、患者から選ばれる施設に変換できる。
・経営の安定化が図れ、勤務環境改善に向けた投資が可能となる。
勤務環境改善マネジメントシステムは、現状分析を行い、対策立案のうえ、アクションプランをつくり、PDCA(Plan:計画、Do:実行、Check:評価、Action / Act:改善)をまわしていく取り組みである(厚生労働省医政局医療経営支援課、2014)。
したがって、医療機関は、業務の改善と人材のスキルアップに取り組み、患者に安全で質の高い医療を提供する。その結果、患者の満足度は向上し、患者から選ばれ続ける施設になり、最終的には、経営の安定化が図れることになる。これらのサイクルを循環させることは、日本の保健医療を支えるための重要な課題である。