ビジネスの出張が航空業界の利益の75%
■空の旅の主役は出張旅行
ビジネスレポートソフトウェアを手がけるサーティファイによれば、毎年、飛行機を使った出張旅行はおよそ4億4500万回発生している。国際ビジネス旅行協会(GBTA)では、出張・会議の総費用について約3450億ドルと推定している。
数のうえでは旅行全体のうち、出張旅行者が占める割合は12%に過ぎないが、航空業界の収益の75%を生み出しているのが出張旅行だ。その出張旅行がパンデミックに直面して、ほぼなくなってしまった。利用者や航空会社を含め、多くの人々が知りたいのは、元どおりに戻るのかどうか、戻るとすればいつ、どの程度の水準まで戻るのかだ。
アメリカン・ホテル&ロッジング協会(AHLA)のチップ・ロジャーズ社長兼CEOは、2021年5月までに出張旅行がパンデミック前の水準の70%にまで回復する可能性ありと見ていた。しかし第1に、どの業界も同じだが、航空業界が通常の70%の需要では、よほどのコスト削減に踏み切らない限り利益は上げられない。
第2に、もっと差し迫った問題として、ロジャーズの見立ては、出張旅行者の心理と一致しない点が挙げられる。IATAが実施した最近の調査では、66%が出張旅行を減らす意向を示しているのだ。また、同じく66%がプライベートの旅行も減らすと回答している。
「出張旅行を恒久的に30~50%削減する計画」
近いうちにワクチンが供給されることは、間違いなく業界にとって安心材料となるが、私としては、ただちに空の旅にそれなりの(といってもパンデミック前の水準よりはるかに少ないが)費用をかける気にならない。
もう1つの未知数は、航空運賃の行方だ。パンデミック後、航空券にこれまで以上に高い金額を払うことになるのだろうか。どうやらそうなりそうなのだ。エアバス傘下の航空データ会社スカイトラによれば、2020年5月にはヨーロッパ・アジア太平洋間の航空運賃平均額が、驚くべきことに34%も上昇していた。
その結果、危機が長引けば長引くほど、出張旅行者自身も勤務先の企業も、出張に代わる安全策を模索する可能性が高くなる。もちろん、その1つがテレビ会議・ビデオ会議だ。
ビデオ会議は、対面の会議に代わる有力な選択肢であるだけでなく、多くの経営幹部が優れたコミュニケーション手段とみなし始めている。対面の会議では、こっそり携帯電話をチェックする人がいるなど注意散漫になりやすいが、ビデオ会議ならもっと集中力や効率が要求されると指摘する声もある。
出張旅行にかかる多額の経費を確実に削減できる利点もある。たとえば、大手香料メーカー、インターナショナル・フレーバー・アンド・フレグランスのCEOは、昨年、『ウォール・ストリートジャーナル』紙の取材に応じ、「リモートワークの有効性が証明されたため、出張旅行を恒久的に30~50%削減する計画」を明らかにした。