2億円の資産を築いた76歳男性、誰も面会に来ない孤独な日々
「翔太に全部あげるつもりだったんだがな……」
地方都市にある介護付き有料老人ホーム。面会簿に自分の家族の名前がない日が続く中、山本隆一さん(仮名・76歳)は職員にぽつりとこぼしました。
隆一さんは不動産賃貸業を営み、金融資産と不動産を合わせて約2億円の資産を築いた人物です。現在は長男が家業を継ぎ、隆一さん自身は6,000万円ほどの貯蓄を手元に残しています。
経済的には決して困っておらず、資産のおかげでサポートの手厚い施設に入居できています。しかし、面会に訪れる家族はほとんどおらず、心は空虚でした。
隆一さんには長男、次男、長女の3人の子どもがおり、それぞれに孫が1人ずついます。かつては、声をかければ集まれる距離に住み、賑やかに食事することも珍しくありませんでした。
しかし、その関係が少しずつ変わり始めたのは、ある“お祝い”がきっかけでした。 長男の息子、翔太くんが地元の私立小学校に合格した日のことです。
「大事な跡取りだから」露骨だった、孫への経済援助の差
翔太くんが私立小学校に合格すると、隆一さんは金融機関で翔太くん名義の教育資金専用口座を開設。教育資金の一括贈与制度を利用し、学費として1,000万円を入金しました。
さらに、入学を祝うために親族が集まった席で、隆一さんは分厚い封筒を差し出しました。
「翔太、これはじいちゃんからのお祝いだ。しっかり勉強しろよ」
中身は現金100万円。周囲は一瞬、言葉を失いました。その後、ほかの2人の孫が小学校に進学したときにも、隆一さんは同じように封筒を渡しました。しかし、中身はそれぞれ現金5万円。
「気持ちだからな」と笑う隆一さんに誰も反論はしませんでしたが、空気が確実に変わったのは確かです。しかも、ほかの孫に対する教育資金の援助はまったくありませんでした。
誕生日や進学祝いなどでも、明らかな差がありました。「同じ孫なのに、どうしてここまで違うのだろう」。口にすることはなくても、その違和感は次男・長女一家の心の中に静かに根を張っていきました。
隆一さんに悪気はありませんでした。「長男が家を継ぎ、血筋や家業を守る」という価値観のもとで生きてきた隆一さんにとって、長男の子どもである翔太くんは「跡取り」でした。自然と期待も支援も集中していったのです。
