旅行者の65%が新型コロナの感染が不安と回答
■飛行機での移動
2019年に、私は150回以上も飛行機に乗って、世界各地を訪れていた。過去4年間だけでも、飛行機での移動距離は100万マイル(約160万キロ)近くに及ぶ。どれだけハラハラした日々だったか、私の白髪頭を見れば一目瞭然だ。私の仕事に出張はつきものである。私の職業自体がそうだし、2019年に手がけた案件もそうだが、出張はなくてはならないものだっただけに、飛行機での移動なしに仕事をこなすことになるとは、想像だにしなかった。
今、パンデミックの最中に本稿を執筆していて、今度は座席のクラスやフライト時間にかかわらず、快適に飛行機に乗ることが想像できなくなっている自分がいる。空港の大混雑や長い行列、清潔さを欠いた機内など、うんざりするような経験は何度もしているが、パンデミックの今になって考えると、余計にゾッとするし、よくあんな状況で平気だったなとつくづく思う。そう思っているのは、私だけではない。
「目下の危機は、長期にわたって影を落とす可能性があります。かつてのような旅の習慣を取り戻すには時間がかかるというのが、乗客の方々の声です。多くの航空会社では、2019年当時の需要水準に戻るのは、2023年か2024年になりそうだと見ています」
これは、IATA(国際航空運送協会)事務局長、アレクサンドル・ドゥ・ジュニアックによる業界調査結果を説明した際の導入部である。
2020年6月、最近旅行したことのある4700人を対象に実施した調査によれば、ウイルス感染が「ある程度不安だ」、あるいは「非常に不安だ」との回答は83%に上り、65%が感染者の隣の席に座ることに不安を覚えていることがわかった。
だが、本当に厳しい結果はここからだ。「少なくとも6カ月は旅行を再開するつもりがない」との回答が54%に上ったのである。「少なくとも1年は再開しない」との回答も20%近くあり、わずか2カ月間で11%も増加した。
そうなると、空の旅やそれに依存する小売業に関して、重大な疑問が持ち上がる。