部屋の「引渡し」は請求できる?誰にすればよい?
(1)実体要件
区分所有法60条1項の実体要件は同法59条1項の場合と同様です。なお、占有者に対しては同法7条、58条の請求はできません。
(2)請求主体、請求の手続要件
区分所有法60条1項の請求主体、手続要件は区分所有法59条1項の場合と同様です。なお、弁明の機会は共同利益背反行為者である占有者に与えれば足り、区分所有者に与える必要はないとされています【最判昭和62・11・17判タ644・97】。
(3)請求内容・効果
占有者に占有権限がある場合は、占有権限付与者と占有者の両者(占有者が区分所有者からの賃借人の場合は、区分所有者および賃借人。占有者が管俳人からの賃借人の場合は、賃借人および転借人)を相手方とし、当該専有部分の占有権限の根拠となる契約を解除し、その引渡しを請求します。
占有者に占有権限がない場合は、占有者のみを相手方とし、当該専有部分の引渡しを請求します。
管理規約の禁止規定に基づく違反行為の停止等の請求
迷惑行為が、共同利益背反行為といえる程度にまでは達していないが管理規約の禁止規定に違反している場合に、当該規約に基づいていかなる請求が可能でしょうか。
管理規約の禁止規定に基づき違反行為の停止について裁判外の勧告や裁判上の請求をすることは可能です。
この点、訴訟の提起をする場合に、総会の普通決議を要するか否かについて、立法担当者は決議による必要はなく管理規約に基づく一般的な委任(法26条4項、47条8項参照)も可能としています。しかし、区分所有法57条1項の請求との整合性を考えれば決議を要すると反論される根拠も十分にあり、個別に決議をする方が確実です。
他方で、共同利益背反行為に至らない程度の違反行為に対しては、管理規約の定めに基づいて使用禁止や競売を申立てることはできません。
なぜならば、専有部分等の使用禁止および競売についてはその権利制約の程度の重大さから、区分所有法上厳格な要件が要求されているためです(使用禁止等の請求権を定めた規約部分は無効になります)。