「マンションでペット飼育を禁止」法的に問題はあるか
当マンションにおいては、これまでペットの飼育を容認しており、実際に犬や猫を飼っている区分所有者の方もいます。管理規約には、ペットの飼育を制限する定めはありません。ところが、最近ペットに関する苦情やトラブルが多くなってきました。そこで、次回の総会において、ペットの飼育を禁止する規約に改正しようと思いますが、可能でしょうか。
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そもそも、区分所有者として任意の使用が認められている専有部分について、管理規約によりペットの飼育禁止等の使用制限ができるのかが問題になります。
●管理規約で「共同の利益に反する行為」は制限できる
東京地裁平成6年3月31日判決(判時1519号101頁)では、区分所有法は、専有部分を含む「建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項」(法30条1項)に関し、「共同の利益に反する行為」として具体的にどのような事項を盛り込むかについては強行法規等に反しない限りマンション組合の自治に委ねる態度をとっている旨判示しました。
したがって、管理規約により共同の利益に反するような行為についてどのような制限を設けるかは原則として自由であり、管理規約による専有部分の使用方法の制限は可能です。
●ペット飼育も「共同の利益に反する行為」と見ることができる
東京地裁平成8年7月5日(判時1585号43頁)では、ペットの飼育については、汚損、臭気等の有形の問題がある上、人によっては動物の存在目体に不快感を覚えるという無形の問題があるとし、「共同利益に反する行為として、これを禁止することは区分所有法の許容するところである」としました。
したがって、共用部分・専有部分を問わず、管理規約によるペット飼育の制限は可能です。
「総会の決議等による制限」は?
次に、総会の決議等によってペット飼育の制限ができるかが問題になります。
つまり、特別決議が要求される管理規約ではなく、総会の普通決議や使用細則(一般的に、使用細則の変更・制定は普通決議で可能とされています。)によって、専有部分の使用の制限が可能かという問題です。
この点、マンション標準管理規約(単棟型)18条に関する国土交通省のコメントにおいて、「使用細則で定めることが考えられる事項としては、動物の飼育(中略)等専有部分の使用方法に関する規制(中略)等があげられ、このうち専有部分の使用に関するものは、その基本的な事項は規約で定めるべき事項である。」とし、「犬、猫等のペットの飼育に関しては、それを認める、認めない等の規定は規約で定めるべき事項である。基本的な事項を規約で定め、手続き等の細部の規定を使用細則等に委ねることは可能である。」としています。
また、裁判例にも、小鳥および魚類の飼育禁止が管理規約および細則に定められた事例で、「ペットクラブ発足時に飼育中の一代に限りその飼育を認める」旨の総会の決議を有効としたものがあります【前掲・東京地判平成6・3・31】。
したがって、ペット飼育の許否自体に関しては管理規約に定めを設ける必要がありますが、その飼育方法等の細目に関しては使用細則や総会の決議により柔軟に定めることが可能です。