※画像はイメージです/PIXTA

騒音等の迷惑行為を続けるマンション住人に対しては、その行為の内容によってさまざまな法的措置をとり得ます。「建物の区分所有等に関する法律」の条文ごとに、対応策を検討してみましょう。香川総合法律事務所・代表弁護士の香川希理氏が解説します。 ※本連載は、書籍『マンション管理の法律実務』(学陽書房)より一部を抜粋・再編集したものです。

このケースで「満たされている要件」は?

占有者であるBの迷惑行為は、その期間は数年にわたり、程度・態様は一日中大音量で騒音を出し睡眠障害を招くなど刑法上の傷害罪が成立する余地すらあるものであり、マンションの共同生活において当然甘受すべき受忍義務の程度を大きく超える重大なもので、共同生活上の障害が著しいことは明らかといえます。

 

また、迷惑行為は多岐にわたり、各行為の停止によっては共同生活維持を図ることが困難といえます。したがって、区分所有法60条1項の要件を満たし、AB間の使用貸借契約を解除および専有部分の引渡請求が認められるでしょう。

 

区分所有者であるAについて、本件で具体的な迷惑行為を行っているのはBであり、Bに対する引渡請求等が実行されればひとまず迷惑行為は止むことになります。

 

そのため、Aに対する請求が認められるか否かは、Aの区分所有権を強制的に奪うことによらなければ、区分所有者の共同生活上の障害が著しく、共同生活の維持を図ることが困難であるといえる必要があります。

 

Bは親であるAに経済的に依存しており、Aは当初よりBの監督を放棄し自らも管理費を滞納するなど迷惑行為を主体的に解決する意思や能力が欠如しており、Aが区分所有権を持ち続ける限りBに再度当該専有部分を使用させる蓋然性が高いといえます。

 

したがって、区分所有法59条の要件を満たす可能性が高く、Aの専有部分にかかる競売請求も認められる可能性が高いといえるでしょう【東京地判平成17・9・13判タ1213・163】。なお、滞納管理費の支払請求は管理規約に基づく請求として当然認められます。

 

 

香川 希理

香川総合法律事務所 代表弁護士

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