大迷惑・無職の子を「部屋から追い出せる」条件は?
(1)実体要件
区分所有法58条1項の実体要件は以下の2つです。
ア 共同利益背反行為による共同生活上の障害が著しいこと
上記2の区分所有法57条に基づく行為の停止等の要求についての判断基準と同様の比較衡量において、当該共同利益背反行為が受忍限度を超える程度、違法の程度が著しい場合がこれにあたります。
イ 同法条1項に基づく請求によってはその障害の除去、区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であること
多様な共同利益背反行為を繰り返している場合等、同法57条1項に基づき特定の共同利益背反行為のみの停止請求をしても事態の抜本的解決にならない場合がこれにあたります。具体的な例として、暴力団等が専有部分を事実上事務所として使用している例【福岡地判昭和62・5・19判タ651・221】が挙げられます。
なお、同法58条1項に基づく請求をするにあたり、57条1項に基づく請求を経る必要はありません。
(2)請求主体、請求の手続要件
ア 請求主体
区分所有法58条1項に基づく使用禁止の請求は、総会の決議に基づき、訴えをもってしなければなりません。請求主体は、同法57条1項に基づく訴訟の提起をする場合と同様に管理者等に限られます(法58条1項、4項、57条1項、3項)。
イ 特別多数決議
区分所有法58条1項に基づき訴訟を提起する場合は、区分所有者の数および議決権の各4分の3以上の多数の総会の決議が必要です(法58条2項「特別多数決議」)。
同法57条1項に基づく請求と同様に、請求の相手方および共同利益背反行為ごとに決議を要します。管理規約においてあらかじめ訴訟提起の委任等を定めることはできません。
ウ 弁明の機会付与
上記イの決議をするには、あらかじめ、当該区分所有者に対して弁明の機会を与える必要があります(法58条3項)。弁明の機会の付与の方法としては、総会の席上で決議前に弁明する機会を与える方法が望ましいですが、共同利益背反行為者が総会の席上で発言することが決議に不当な影響を与える場合は事前に弁明書を提出させるなどして、決議に先立ち弁明書の内容を他の区分所有者に伝達する方法でも足りるでしょう。
(3)請求内容・効果
区分所有者に対して、一定期間当該区分所有者の専有部分および共用部分の使用禁止を請求できます。
なお、当該共同利益背反行為を行った区分所有者自身による使用が禁止されるのみであり、第三者に対する当該専有部分の譲渡や貸借は禁止できません。