本連載は、東海東京調査センターの中村貴司シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)への取材レポートです。今回は、金(ゴールド)と原油価格の動向に注目しながら、日本株の中長期見通しについて考えていきます。
日本株の動向を見る上で注目が集まる4つのポイント
8月に入り、米国株(NYダウ)やドイツ株(DAX)に加え、新興国のインド株(センセックス)などが過去最高値を更新。株高、債券高が併存するゴルディロックス(適温相場)の様相が継続している。
一方、中国の経済・政策に対する不透明感に加え、全国で新型コロナウイルスの新規感染者数が急速に拡大していることなどが嫌気され、日本株(日経平均)は8月20日に一時2万7000円台を割り込み、年初来安値を更新した。
8月8日に東京オリンピックが無事に閉会(パラリンピックは8月24日~9月5日まで)したことで、中期的な市場の注目は、①8月27日にパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長がオンラインで講演する経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)を受けたテーパリング(量的緩和の縮小)の時期とペース、②米中景気のピークアウトの確度、③致死率・重症化率を抑制しやすいと言われる2回目の国内ワクチン接種率のペース、④解散・総選挙を見据えた追加経済対策の時期や規模などに集まると考える。
足元の企業業績は全体的に良好で、バリュエーションが低下するなか、日本株式は欧米株式との対比で出遅れ感が強まっており、グローバルアロケーションによる海外からの資金流入が下値を支えるとみる。
また、感染力が強いといわれるデルタ株や地政学リスクなどへの懸念は残るものの、ワクチン接種率の高まりに伴い、今後も世界経済が正常化に向かうとの見方に大きな変化はなく、日本株投資においては銘柄選別を強化しつつ、中長期的な視点でTOPIXバリューや内需・リオープニング銘柄の押し目買いを継続することは有効な投資戦略になりうると考える。
また、金利の正常化に伴う米長期金利の緩やかな上昇圧力は、(景気敏感バリュー株としての)日本株に対してプラスに働くとみている。
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東海東京調査センター
投資戦略部 シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)
山一證券、メリルリンチ日本証券、損保ジャパンアセット(現SOMPOアセット)などでの富裕層・法人営業に加え、年金基金、投資信託のアナリストやファンドマネージャーとして新興市場やオルタナティブを含む幅広い市場・商品の担当責任者を経て、2016年に東海東京調査センター入社。
現職では短中期の戦術的資産配分(タクティカル・アセットアロケーション)やオルタナティブ投資(ヘッジファンド・テクニカルやコモディティ戦略含む)の視点を踏まえたグローバルな日本株の市場分析等を行う。他の代替資産・戦略としてJリート投資戦略、ESG投資戦略、行動ファイナンス投資戦略などもカバーしている。
英国国立ウェールズ大学経営大学院MBA。アライアント国際大学・カリフォルニア臨床心理大学院米国臨床心理学修士号(MA)。慶應義塾大学商学部卒。国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)、国際テクニカルアナリスト連盟検定テクニカルアナリスト(MFTA)、CFP、英国王立勅許鑑定士(MRICS)、不動産証券化協会認定マスター、中小企業診断士。
日経CNBCなどのTV・メディアに出演。日経新聞、QUICK、ロイター、ブルームバーグ、時事通信、東洋経済オンライン、幻冬舎ゴールドオンラインなどでも執筆、コメントを行う。ヘッジファンド・テクニカルのキャリアとして世界のテクニカルアナリスト協会を束ねる国際テクニカルアナリスト連盟(IFTA)の理事などを歴任。早稲田大学ビジネスファイナンスセンターや同志社大学、青山学院大学等で講師を務める。
著書には投信営業に行動ファイナンスアプローチなどを活用した『会話で学ぶ!プロフェッショナルを目指す人の「投信営業」の教科書』(2021年)がある。
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