(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、東海東京調査センターの中村貴司シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)への取材レポートです。今回は、東京都心5区のオフィス空室率の動向をもとに、Jリートの見通しについて考えます。

東京都心5区のオフィスビル空室率推移

Jリートの動きを示す代表的な指数である東証REIT指数(以下、Jリート)は7月13日に2200ポイントをつけたあと、上値の重い展開が継続している。全国で新型コロナウイルス感染者数が大幅に増加したことが嫌気された。また投信の利益確定売り(後述)や投資口の追加発行の動きが相次いだことなども市場全体の上値の抑制要因になったとみられる。

 

まずは、Jリートの取得資産の概ね4割を占め、指数ベースでの影響度が大きいオフィス市況について東京都心5区の統計でフォローしたい。

 

2021年8月12日に三鬼商事が東京都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷区)の2021年7月時点のオフィスビル平均空室率を発表した。空室率は6.28%(前月比+0.09ポイント)となり、上昇は17ヵ月連続となった(図表1)。

 

【図表1】東京都心5区のオフィスビル空室率と賃料の推移

 

また、満室稼働の大規模ビル1棟が既存ビルの区分にシフトしたため、新築ビルの空室率は11%を上回る水準まで上昇した(図表2)。

 

【図表2】東京都心5区の新築・既存ビル別のオフィスビル空室率の推移

 

さらに、大型空室の募集開始やグループ企業の集約に伴う解約の動きなどが空室率を押し上げた。平均賃料(3.3平方メートルあたり)についても21,045円(前月比-115円)となり、12ヵ月連続して下落した。

 

空室率の上昇に遅行する形で賃料に下落圧力がかかっており、前年比の賃料の伸び率は-8.56%と2020年12月に前年比マイナスに転じて以降、8ヵ月連続の下落となった。5区別の空室率を見ると、港区の空室率が8.3%まで上昇した(図表3)。

 

【図表3】東京都心5区別のオフィスビル空室率の推移

 

一方、IT・スタートアップの多い渋谷区の空室率は3ヵ月ぶりに低下し、空室率は6.45%となった。新宿区も2ヵ月連続低下した。賃料の前年比を見ると、すべての区の下落率の前月差がマイナスに転じ、渋谷区の前年比の賃料の伸び率は-10%程度まで拡大。それに伴い、渋谷区の賃料の水準は2年ぶりに千代田区を下回った(図表4)。全体的には改善の動きはみられず、オフィスリートの上値を抑える要因となろう。

 

【図表4】東京都心5区別のオフィスビル賃料の推移

 

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このレポートは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資判断の最終決定は、お客様自身の判断でなさるようお願いいたします。このレポートは、信頼できると考えられる情報に基づいて作成されていますが、東海東京調査センターおよび東海東京証券は、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。なお、このレポートに記載された意見は、作成日における判断です。

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