金(ゴールド)と原油価格…足元の動きと今後の見通し
今後の日本株の動向を占う上で、グローバル景気のピークアウトや市場センチメントの動向などを商品(コモディティ)から推し量ることも重要だと考えている。ここでは、金(NY金先物)、原油価格(WTI原油先物)の足元の動向と今後の見通しについて取り上げたい※。
※NY金先物はブルームバーグティッカーのGC1、WTI原油先物は同ティッカーのCL1を使用してコメント
■金価格は一時1700ドル割れ
金価格は、米10年債利回りが8月4日に一時1.1258%まで低下したあと、反発に転じたこと(それに伴い、「米名目10年債利回り-米10年期待インフレ率」で算出される米実質長期金利のマイナス幅は縮小方向に動いた)やドル高が進展したことなどを受け、調整色を強めた。
また8月下旬にパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が講演する経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)を控え、(テーパリングへの警戒感⇒先行きの米長期金利の上昇圧力⇒金価格の下落の連想などから)金のポジションを落とす動きも広がり、8月9日に1トロイオンス=1692.60ドルまで一時調整した。
しかし、8月中旬から下旬にかけては、ドル安に加え、米ミシガン大学消費者信頼感指数の大幅低下やアフガンなどの地政学リスク(反政府勢力「タリバン」が首都カブールを制圧)の高まりを受け、投資家のヘッジ(株式市場の調整リスクへの備え)としての金需要から下値では買いが入り、1トロイオンス=1800ドル台を回復している(8月25日・日本時間)。
また、ファンダメンタルズ面からは世界経済の正常化が先行きの米実質長期金利に下降硬直性もしくは上昇圧力をもたらすとの見方に変化はなく、上値では利益確定の動きが強まると考える。
当面の金価格は、ボックスレンジ(1700ドル~1900ドル程度)での推移を想定しているが、8月27日のジャクソンホール会議を受け、米長期金利に想定以上の上昇圧力がかかった場合の下振れリスクには留意したい。
また、200日移動平均線が下降を辿るなか、年初来安値である1トロイオンス=1673.30ドル(3月8日)を割り込んだ場合は下振れ圧力が強まりやすいとみられ、注意が必要だろう。
■原油価格も調整色を強める展開
原油価格は、米中景気のピークアウト懸念が広がるなか、アジア諸国で新型コロナのインド型(デルタ株)が猛威を振るっていることに加え、7月の中国の原油輸入量が前年同月比2割程度落ち込んだことなどを受け、中国を含むアジア経済の落ち込みが原油価格の抑制要因になるとの懸念が強まり、調整色を強めた。8月25日時点(日本時間)では67ドル程度での推移となっている。
足元の石油メジャーやシェール企業の決算動向から、化石燃料に対する設備投資や生産抑制の動きが見られており、下値では原油に対する押し目買いが入りやすいとみる。
一方、バイデン米政権が(ガソリン価格上昇が米国の個人消費を冷やす可能性があるため)OPECプラスに対し原油の増産を求める声明を出したことなどは原油の上値を抑える要因になろう(ただし、即時ではなく長期的な行動を要請したものである点には留意)。
加えて、9月に夏季休暇シーズンが終わることがガソリン需要の減少につながると考えられることも原油価格の上値を抑制しよう。
世界経済の正常化が一進一退ながらも進展するとの前提のもと、原油価格の中期的なレンジ見通しとして、概ね65ドル~75ドル程度を想定している。
■まとめ
日本株への影響としては、金と原油が逆相関(異なる値動き)で推移する限りは、大幅なリスクオフの動きは生じにくいと考える。逆に順相関(同じような値動き)で金と原油が下落する局面となった場合は、日本株への下振れ圧力は大きくなると考え、その場合はショートなどタクティカルな戦略を組み合わせることも一案となろう。
中村 貴司
東海東京調査センター
投資戦略部 シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)
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