「お願いしようかな」余命1か月切った夫が葛藤して決めたこと (※画像はイメージです/PIXTA)

夫婦であっても、どちらかに死期が迫っているときにどう反応するかは、千差万別です。今回は、休職して肺がん末期の夫を介護する妻の事例を紹介します。本連載は中村明澄著『「在宅死」という選択』(大和書房)より一部を抜粋し、再編集した原稿です。

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肺がん末期の夫は「最期は家がいい」

■「あと1か月だったら、仕事を休んで最期まで付き合うよ」

 

ご夫婦であっても、どちらかに死期が迫っているときにどう反応するかは、やはり千差万別です。G郎さんは60代で肺がんの終末期でしたが、「最期は家がいい」と最初から明確な意思表示があった方でした。

 

夫婦関係はとてもよさそうでしたが、互いに自立した関係で、G郎さんは病院へもひとりで通っていて、奥さまにはあまり手伝ってもらっていない様子でした。

 

奥さまは福祉系のお仕事もされていて、介護にはもちろん理解があるのですが、「夫は自立しているし、好きにやらせてあげたい」というスタンスを保っていました。

 

当初は、G郎さんは在宅医療にはあまり乗り気ではなく「信頼している病院の主治医に、在宅医療を入れたほうがいいと勧められたからとりあえず」というだけの理由で連絡をくれたようでした。訪問診療にもとくにメリットを感じていないので「月に1回来てくれればいいよ」という話になりました。

 

通常、がんの終末期の患者さんには、少なくとも月に2回は訪問診療に伺います。ただ、この時点ではG郎さんは奥さまにも病状を詳しくは伝えていなかったようで、奥さまのほうも、まだ元気そうに見えるG郎さんの死期がそこまで迫っているとは思っていないようでした。

 

しかし、がんという病気の最期は、状態が急速に変化するものです。

 

ついこのあいだまで「とても末期とは思えないね」と元気に過ごしていた方でも、あるとき調子が悪くなり動くのがつらくなりはじめると、そこから亡くなるまでに数週間ということが多々あります。ですが、その病状の経過を説明されていないこともありますし、聞いたとしても、今現在はお元気なので、在宅ケアの必要性を感じられないことがよくあります。

 

G郎さんも、余命1か月を切ったかもしれないという病状になってきた頃、やはり緊急で訪問することが増えてきました。

 

どんな人にとっても、動けなくなる自分を想像するのは簡単ではありません。G郎さんも、きっとそうだったのだと思います。

 

けれども、だんだん身体が動かなくなってきて、ご自分でも、どう過ごすのがよいのかを考えているようでした。かといって、仕事を休んでもらってまで妻に面倒をみてもらうというのは、どうなんだろう―と。

 

「迷惑をかけるから病院に行くべきなんだろうけど、やっぱり家にいたい」

 

奥さまの助けを借りずにひとりで何とかしたいとG郎さんは葛藤していましたが、やはり助けは必要です。

 

在宅医療専門医
家庭医療専門医
緩和医療認定医

2000年東京女子医科大学卒業。国立病院機構東京医療センター総合内科、筑波大学附属病院総合診療科を経て、2012年8月より千葉市の在宅医療を担う向日葵ホームクリニックを継承。2017年11月より千葉県八千代市に移転し「向日葵クリニック」として新規開業。訪問看護ステーション「向日葵ナースステーション」、緩和ケアの専門施設「メディカルホームKuKuRu」を併設。緩和ケア・終末期医療に力をいれ、年間100人以上の患者の方の看取りに携わっている。病院、特別支援学校、高齢者の福祉施設などで、ミュージカルの上演をしているNPO法人キャトル・リーフも理事長として運営。著書に『「在宅死」という選択 納得できる最期のために』(大和書房)がある。

著者紹介

連載「在宅死」という選択で自分らしい生き方と逝き方を探る

「在宅死」という選択~納得できる最期のために

「在宅死」という選択~納得できる最期のために

中村 明澄

大和書房

コロナ禍を経て、人と人とのつながり方や死生観について、あらためて考えを巡らせている方も多いでしょう。 実際、病院では面会がほとんどできないため、自宅療養を希望する人が増えているという。 本書は、在宅医が終末期の…

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