(※写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍はこのデジタル時代に小売業界をはじめ、既存のビジネスモデルの大崩壊を予感させるという。※本連載は、ダグ・スティーブンス氏の著書『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

過去との最大の違い「現代は選択肢がある」

この動向は、富、成長、移動の面で、大きな不均衡も生み出す。たとえば、ブルッキングス研究所によると、2005年以降、「イノベーション領域」での雇用増加分のうち、90%がアメリカのたった5つの都市圏に集中している。

 

ところが、これが変わる可能性があるのだ。工業化時代に都市化、集中化、商業化、そして最終的にグローバル化へと進んできたが、これが歴史的な転換を遂げるかもしれないのである。その起爆剤となるのが、新型コロナウイルスだ。生活や仕事、教育、娯楽の場、そして特に買い物のあり方が、根本から永遠に変わろうとしているのである。

 

「何を馬鹿なことを」と、本書を閉じる読者がいるかもしれない。そういう批判は承知のうえだ。確かに、これまでもいろいろな時代に、世の中ががらりと変わるといった予想はさんざん耳にしてきたが、いずれも実現していない。新型コロナウイルスの世界的感染拡大に絡んで、特に引き合いに出されるのが、1918年のスペインかぜの世界的大流行だ。

 

当時と今とでは人口密度の違いはあるにせよ、1918年のパンデミックでは、都市封鎖もなければ、大規模な集まりやレストラン・店舗の営業、公共交通機関の利用が禁止されることもなかった。

 

だが、最大の違い、しかも往々にして見過ごされている違いがある。過去のどの時代とも違って、現代は選択肢があるということだ。人類の歴史を振り返ると、今、テクノロジーのおかげで享受できている時間的・空間的な自由は、過去にあり得なかった。その気になれば、例外はあるにせよ、いつでもどこからでも、ほぼ何でもできる時代である。1918年を生きた人々にとっては、いや、1980年代から見ても、現在の暮らしは、まるで当時のSF小説のようだ。

 

変化の兆しはすでにある。産業や労働の集中化、仕事の集権化、教育の体系化、製品の物流システムといったものに、ほころびが見られ始めている。小売業界も無縁ではいられない。今日の小売りは、こうした工業化時代に作り上げられた構造にしっかりと組み込まれているからだ。店舗の立地、デザイン、業態、営業時間はもちろん、場合によっては収益モデルさえも産業基盤に組み込まれていて、それがデジタル時代に崩れ去ろうとしているのである。

 

それでも生き残る企業は、パンデミックに耐える不屈の精神があるだけでなく、その先にある世の中を見極める先見性も備えているはずだ。脱皮のできる小売業者なら、この変化を生き抜くことができる。そうでない小売業者は過去の遺物となる。

 

 

ダグ・スティーブンス
小売コンサルタント

 

 

小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」

小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」

ダグ・スティーブンス

プレジデント社

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