(※写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍はこのデジタル時代に小売業界をはじめ、既存のビジネスモデルの大崩壊を予感させるという。※本連載は、ダグ・スティーブンス氏の著書『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

都市化を引き起こす新しいデジタル革命

その匂いを嗅ぎつけて、後に続いたのが小売業者だ。1950年代になって、初の郊外型ショッピングモールが誕生する。そして30年以上にわたって、消費生活の中心的な役割を担っている。郊外の消費者が、新たに出現した中産階級としての象徴を求めるなか、どうにかそのニーズに応えてきたのが、ショッピングモールだった。

 

1950年代後期には、ベビーブーム世代の大部分が4~14歳になり、史上空前の消費ブームの牽引役となっていった。この世代の圧倒的な人口規模は、今日に至るまで先進国経済に大きな波及効果をもたらしている。

 

新興の中産階級が都市から郊外へ脱出すると、都市の中心部は富裕層と貧困層が暮らす場に変わりはじめた。1960年代になると、都市部の所得格差を背景に犯罪が急増する。この傾向はアメリカだけでなく、大西洋を挟んだヨーロッパでも見られた。ハーバード大学のスティーブン・ピンカー教授は次のように説明する。

 

「アメリカとヨーロッパは歴史も発展段階も違い、さまざまなズレがあるものの、あるトレンドだけは同時発生している。それは大都市の暴力事件数が1960年代に方向転換したことだ」

 

アメリカの犯罪件数は10年で倍増という、過去100年以上の間に経験したことのないほどのペースで悪化していった。

 

都市が荒廃すると、そこにある商業活動の中心地も道連れになった。失業率、犯罪率の上昇を受け、欧米の主要都市の多くは30年以上にわたって苦しむことになる。

 

だが、1980年代後期に始まって、今日まで続いている新しい革命がある。都市化を引き起こす要因はさまざまだが、テクノロジー企業もその1つだ。

 

初期の先駆者であるIBMやマイクロソフト、アップルから、第2波として登場したフェイスブックやアマゾン、ウーバー、ツイッターなどの新興勢力に至るまで、テクノロジー企業が進出先の都市に莫大な税収を約束し、まばゆいばかりのピカピカの社屋などのインフラを整備し、そこで働く何千もの若い従業員は、自分のプログラミング能力で手にした給料を地元に落とすことになる。

 

自治体側も、こうした企業の便宜を図り、いろいろなものが集まる注目度の高い土地を提供しただけでなく、世界屈指の理工系大学・研究機関にも、近くの土地を用意した。かつて産業界を牛耳った大物らと同じように、新しく誕生した有力テクノロジー企業は、お膝元に成長市場を抱え、優秀な従業員を絶えず取り込みながら、成長の原動力にしている。

 

現在、世界の人口の半分が都市部に暮らしており、経済生産性に関して不釣り合いなほどに大きな役割を担っている。世界経済フォーラムの2016年のレポートによれば、「今から2025年までに、世界の成長の3分の1は、欧米主要国の首都と新興国の巨大都市から生まれる。次の3分の1は、新興国の多くの人口を抱える中堅都市から生まれ、残る3分の1が発展途上国の小都市や農村部からもたらされる」という。

 

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小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」

小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」

ダグ・スティーブンス

プレジデント社

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