※写真はイメージです/PIXTA

事業承継に伴う株式移転は、自社株の評価が下がったときに実行できれば、移転コストを抑えることができます。しかし、時期を逸してしまうと効果が得られないため、十分に計画を練って実行する必要があります。自社株の評価を「意図的に」下げて、タイミングを計って株式移転を行う場合、どのような対策を講じればよいのでしょうか。見ていきます。

対策3.生命保険の活用は事業承継対策になる

以前は、保険料の全額を法人の損金として計上でき、解約返戻金率も高い生命保険商品が「節税保険」などと称して販売されていましたが、2019年の税制改正により、そういった保険の販売はできなくなりました。

 

しかし現在でも、生命保険は相続・事業承継対策においてさまざまな役割を果たします。保険の種類は多く、加入の仕方もさまざまな形が考えられますが、ここでは、「契約者(保険料=掛け金を支払う立場)」が会社、「被保険者(保険の対象となる立場)」がオーナー経営者、そして「保険金受取人」が会社、という場合を考えます。

 

まず、もし突然の事故や病気でオーナーに万一のことがあったときの、会社の経営持続、いわゆるBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)という観点からは、生命保険の本来の役割である死亡保障が役立ちます。

 

この場合、満期保険金がない、いわゆる「掛け捨て」タイプの定期保険を使います。定期保険に満期保険金はありませんが、解約をするといくらかの「解約返戻金」が受け取れます(場合によってはゼロ)。

 

そして、解約返戻金率によって、保険料払い込み期間のうち、どの期間でどれだけの保険料が損金として計上できるのかが異なっています。

 

BCPのための死亡保険金が目的であれば、最高解約返戻金率が50%以下の定期保険を使います。すると、会社が毎月支払う保険料の全額を損金として計上できます。損金の計上は、会社の所得を減らすことになり、結果としてその分株価が下がることになるため、その点から多少の事業承継対策にもなります。

 

一方、オーナーの退職金支給の準備を主な目的として加入する場合は、長期平準定期保険や逓増定期保険を用います。いずれも解約返戻金率が高く、解約返戻金を退職金の原資にできます。

 

ただし、解約返戻金率が50%を超えると、その返戻金率に応じて、保険料払い込み期間のうちの一定期間、保険料の一部(40%~90%)を資産計上する必要があります。損金に計上できる部分が少なくなるので、所得を減らす効果はかなり小さくなります。

 

その代わりに、保険金を原資として高額な退職金を支給できるので、先の項目で見たとおり、退職金支給のタイミングでは株価が大きく下がることになります。

 

ほかにも、最近は、第三分野の保険(ガン保険など)を用いて事業承継対策に利用できる保険商品もあり、さまざまなニーズに応えられようになっています。

 

 

税理士法人 チェスター

 

 

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