※写真はイメージです/PIXTA

事業承継において、後継者へ株式を移転する際、自社株式の評価を一時的に下げることで移転コストを抑えることができます。自社株の評価を事業承継のタイミングに合わせて下げるにはどうすればいいのか、みていきます。

含み損がある資産の売却など、不良在庫を廃棄

事業承継というのは、まさに会社の資産を承継するものなので、貸借対照表の中身がどうなっているのかを確認し、無駄があればそれを省いておくことは重要です。

 

無駄な資産の代表が、遊休不動産や利用しないゴルフ場の会員権です。特に、バブルの時代に投資目的で購入し、価格が大きく下がった土地やゴルフ会員権を、使わないままで「塩漬け」にしている会社は、案外多くあります。あるいは投資目的の上場株式などで、大きく値下がりしたまま保有しているものも同様です。

 

こういった含み損のある資産が計上されている場合、事業承継のタイミングにあわせて、思い切って処分してしまうことをおすすめします。

 

例えば、簿価1億円で資産計上されている土地の時価が7000万円になっているのなら、売却すれば3000万円の特別損失を計上できます。その分、株価が下がるというわけです。簿価と時価との差、つまり含み損が大きければ大きいほど、効果も大きくなります。

 

また、含み損のある土地が事業上必要なものである場合に、オーナー経営者が個人の資金で買い取るという方法もあります。その後、会社に貸し付ければいいのです。この場合、適正な価格での売買であれば問題ありませんが、市場価格よりも低廉での売買だと課税上の問題が生じるので、価格には注意が必要です。

 

また、オーナー社長が買うのではなく、グループ企業間で親会社が子会社に売るようなケースでは、「グループ法人税制」が適用される場合があります。そうなると、損失が計上できないのでこれも要注意です。

 

含み損のある資産を処分するという考え方は、不良在庫などでも同様です。

 

もし販売できる可能性のない汚損品や、何年も売れ残っている長期滞留品が大量に棚卸資産として計上されているのであれば、それを廃棄処分することで損失が計上できます。

 

製造業では、売上原価を引き下げて見かけ上の利益を増やすために期末の過剰生産や過剰在庫が恒常的になっていることがあります。事業承継を機に、不良在庫を処分するとともに、そのような悪習を適正化してから、後継者にバトンタッチするというのも、オーナーがなすべき仕事でしょう。

 

なお、役員退職金での説明と同様ですが、これらの実施により株価が下がるタイミングは、実施した期の翌期となります。株式移転のタイミングには注意してください。

 

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