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どの方法でも…株式移転の問題点は必ず「お金」
多くの中小企業経営者が事業承継に際して直面する「お金まわり」の悩みや心配ごとを取り上げ、それを解決するための対策法について見ていきます。
中心となるのは、自社株式の移転コストに対する対策です。
第1回で確認したように、事業承継を法律的に完成させるには、経営権としての株式を、経営支配を維持できる議決権数(総議決権数の3分の2以上)分だけ、後継者に移転しなければなりません。
一方、株式には財産権という側面がありますので、その財産権は金額(株価)として評価されることになります。普通株式の場合、経営権と財産権を分離させることはできないので、事業承継として後継者に経営権を移転させようとすれば、当然、財産権も同時に移転させることになります。
そして、自社株式を後継者に移転する方法は、相続、贈与、譲渡の3種類しかありません。相続や贈与であれば、相続税、贈与税の課税・納税の問題が生じます。
また、譲渡、つまり後継者が株式を購入するのであれば、その購入資金を負担しなければならず、また、譲渡所得税の問題が生じます。つまり、どんな形で株式を移転する場合でも、そこには必ず「お金の問題」が絡んでくるということです。
その際に、経営者を悩ませる問題が2点あります。
非上場企業の株式は、現金化がほぼ不可能な財産
1点目は、非上場企業の株式は、財産権としての価値をもつとはいっても、それはいわば名目上の価値とでもいうべきものであり、実際に現金化することは、ほとんど不可能だということです。上場企業とは異なり、非上場の中小企業の株を第三者が買ってくれることは、まずあり得ないためです。
唯一の例外は、会社自身が買い取る「金庫株」とM&Aという方法ですが、これにもさまざまな制約条件があり、自由に売買できるわけではありません。
つまり、実際は、ほとんど現金化できない財産であるにもかかわらず、相続や贈与による移転であれば、相続税や贈与税の納税資金、また売買による移転であれば適正な購入資金を、現金で用意しなければならないのです(譲渡代金と取得費の差額は譲渡所得税の対象となり、また、譲渡代金が税務上の適正価額よりも極端に低い価格だと、評価額との差額が贈与と見なされます)。
この自社株が「現金化できない財産」であるにもかかわらず、移転に際しては現金が必要になるという点が、経営者を悩ませる1点目です。
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