※写真はイメージです/PIXTA

事業承継に伴う株式移転は、自社株の評価が下がったときに実行できれば、移転コストを抑えることができます。しかし、時期を逸してしまうと効果が得られないため、十分に計画を練って実行する必要があります。自社株の評価を「意図的に」下げて、タイミングを計って株式移転を行う場合、どのような対策を講じればよいのでしょうか。見ていきます。

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自社株の評価が下がるタイミングで株式を移転するには

自社株式の評価が下がるタイミングで株式を移転すれば、移転コストは低く済みます。そして、自社株式の評価が下がる理由には、大別すると次の3つがあります。

 

1.会社の業績(損益計算書上の利益)が低下すること

2.貸借対照表の純資産額が減ること

3.その他(会社組織が変更されたこと、移転する株式数が削減されたこと、など)

 

そこで、これらの状況が生じるタイミングをうまくとらえて、それにあわせて株式移転をするのが、ここでの対策方法になります。

 

ところで、株式市場で取引されない非上場企業の株価を、どうやって評価するのか、その計算方法は、国税庁の通達によって定められています。

 

できれば、その評価方法の考え方を理解していただいたほうが、対策の中身についても理解しやすいと思われます。

対策1.社長の役員報酬を増額して純資産を減らす

会社から毎月、社長に支給している役員報酬の金額を増やすという方法です。

 

役員報酬を増額すると、その増額部分を費用として計上できます。仮に役員報酬を年間1000万円増額すれば、その分だけ会社の利益が減ることになるわけです。また、支払った分だけ現金が流出するので、貸借対照表上の純資産を減らす効果もあります。その結果として、自社株の評価額が下がるというわけです。

 

さらに、役員報酬は役員退職金計算の基準となるため、あとの項目で説明する「役員退職金による自社株評価対策」の効果を増大させるという、合わせ技のような効果もあります。

 

ただし、いくつかの注意点があります。

 

まず、税務上では、役員報酬の改定が認められるのは、原則年1回、期首(事業年度開始日)から3カ月以内のみです。また、いくらでも好きな金額に増額できるわけではありません。高すぎる役員報酬は、税務上の損金として認められなくなる可能性があります。

 

例えば、業績悪化が続いていて赤字すれすれといった状況なのに、役員報酬を2倍に増やしたら、税務当局から合理性がないと判断され、増額部分の損金算入が否認される可能性があるでしょう。

 

いくらまでの増額なら認められるのかは、明確な数値基準がないため、顧問税理士などに相談して、判断をあおぐ必要があります。

 

また、もう一つの注意点は、社長個人に課せられる所得税・住民税が増えることです。法人のほうでは増加した分の役員報酬を損金に計上することで法人税が減ります。

 

しかし、役員報酬が高額であれば、法人税(実効税率30~35%)よりも所得税+住民税(最高税率55%)のほうが高くなるため、その年度での法人と個人をあわせた総合的な課税額は増えてしまいます。

 

さらに、もしその増えた分の報酬を使わずに、預金などとして残したままで社長が亡くなってしまい、相続が発生すると、その分、相続税も増えることになります。

 

つまり、①税務上、損金算入できる役員報酬額はそれほど大きくない、②個人の課税上は不利になることが多い、というデメリットがあるのです。

 

そのため、これだけで大きな効果を期待できる対策というよりは、役員退職金などとあわせた効果を狙って、長期的に取り組む対策だといえるでしょう。

 

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