事業承継税制(特例措置)を利用するには?
事業承継税制とは、一定の条件のもとで自社株式の贈与または相続に対する納税が猶予および免除される制度です。
猶予ということは、将来に繰り延べられ(贈与または相続の時点では課税されない)ますが、とりあえず、自社株式の移転コスト「0」で、後継者に株式を渡すことができるうえ、最終的に要件を満たせば免除されます。
後継者が確実に決まっていて、その他の各種条件に当てはまるのであれば、事業承継税制の適用を受けることは、十分検討に値します。
なお、事業承継税制には、本来の制度(一般措置)と、より柔軟に利用できるようになった「特例措置」とがあります。特例措置のほうが使い勝手がいいので、現在利用するのであれば特例措置を検討するのが一般的です。ただし、特例措置は、2023年3月31日までに届出書類(特例承継計画)を提出しなければならないという期限が設定されています(2021年4月時点。2021年12月10日に発表された『令和4年度税制改正大綱』では提出期限を1年延長すると明記されている)。
そのため、本制度の適用を検討する場合、なにはともあれ、早急に特例承継計画を策定して提出することがポイントになります。
後継者不足を解決すべく生まれた「事業承継税制」
事業承継税制を一言で表すなら、「後継者へ株式を移転(贈与または相続)する場合の納税をゼロにする」という制度です。
このような制度が登場した背景には、中小企業を引き継ぐ後継者が不足しており、休廃業を選ばざるを得ない中小企業が増えていることがあります。中小企業は日本経済の屋台骨を支える存在です。
後継者不足の要因には、長期的な少子化・人口減少もありますが、承継(株式の移転)コストが高騰していることにより、承継をする魅力が低下しているという点もあります。特に、親族に後継者がおらず、親族外承継(役員・従業員承継など)を実施しようとする場合に、税コストが大きなネックとなる場合があります。
そこには、今までに見てきたような、「現金化は難しいのに、価値があるものとして課税され、納税は現金で行わなければならない」という自社株式承継の問題点も関係しているのです。そこで、事業承継時の納税コストをゼロにする事業承継税制が生まれました。
ところで、「納税コストをゼロにする」ということですが、これは「非課税にする」ことを意味しているわけではありません。基本的には納税が「猶予」された後に「免除」されるという過程を通ります。したがって、結果的には免除となりますが、最初から必ず非課税になる制度ではないという点はご留意ください。
では、どのような会社がこの制度のメリットを享受できるのでしょうか。
「後継者は決まっていて、事業承継をする意志はある。しかし、現状では会社としても、個人としても現金にあまり余裕がない。普通に株式を贈与または相続すると評価額が高くなるため、納税資金が不足する可能性があり、それが事業承継の実施を阻んでいる」。
こういう会社は、当面の納税資金が不要になる事業承継税制がまさにぴったりです。
あるいは、「自社株式以外の財産として一定の現預金はあるが、子どもが3人いて、公平のために、会社を承継させる長男には自社株式のみを相続させ、現預金は他の子に相続させたい」といったケースにも活用できるでしょう。
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