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大切に続けてきた会社を、事業承継で次の世代に引き継ぎたいと思う一方で、相続税の悩みや後継者問題、そもそも何から始めればいいのかがわからない……といった悩みを抱える経営者は少なくありません。今回は、そのような悩みを相談し、一緒に対策していく、税理士の選び方について解説します。

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法人税を扱う税理士は、事業承継については門外漢

事業承継の準備に向けた現状分析や、事業承継対策の計画と実施においては、会計・税務や法務の専門知識が不可欠であるため、専門家に相談しなければなりません。

 

オーナー経営者が事業承継について最初に相談する相手として最も多いのは、毎年の決算書作成や法人税申告をお願いしている顧問税理士でしょう。なかには、顧問税理士から、「そろそろ事業承継対策について考えたほうがいいのでは」とアドバイスされたことをきっかけに、事業承継について考え始めた経営者もいるかもしれません。

 

ところが、実際には事業承継や相続に際して顧問税理士が適切なアドバイスができるのかというと、残念ながらそうではないケースが大半なのです。

 

「同じ有資格者なのだから、税理士なら誰に頼んでもたいした違いはないだろう」と思われるかもしれません。しかし、それは完全に誤解です。

 

同じ税理士でも、法人の申告業務を主業務として行っている税理士と、相続・事業承継を専門にしている税理士では、専門性がまったく異なります。

 

同じ医師でも、内科と外科の専門性が異なるのと同様です。「同じ医者だから」と考えて、骨折のときに内科に行き、腹痛のときに外科に行く人はいないでしょう。適切な治療を受けるためには症状に応じた専門医にかからなければならないように、事業承継に際しても、専門の税理士などに依頼をすることがベストです。その主な理由は、次の3点です。

 

①業務経験回数の違い

税理士にとって、法人税の申告は顧問先ごとに毎年必ず業務が発生するため、多くの業務経験を積むことができます。ところが、事業承継や相続は、一人の経営者の人生において通常は一度しか発生しません。

 

顧問先ごとに、30年に1回くらいしか発生しない業務なのです。10年の顧問経験を持つ税理士でも、顧問先の相続・事業承継に一度も遭遇していないということが、まったく珍しくないのです。そのため、それを専門で扱っていない税理士は、なかなか業務経験を積むことができません。

 

税理士向けの業務マニュアルもありますので、特に難しい部分がない型どおりの相続や事業承継であれば、処理できるかもしれません。しかし非専門の業務を扱うと、やはり時間がかかりますし、間違いが生じる可能性も相対的に高くなるでしょう。

 

その点、相続・事業承継専門税理士は、毎年何件も相続・事業承継業務を担当し、多くの経験を積んでいます。その実績をベースとして、コツやノウハウを蓄積しているため、対応スピードも速く、しかもミスのない仕事が可能になるのです。

 

②扱う税目や関連する法律の多さ

通常の法人の決算申告業務においては、法人税を中心にあとは消費税等の知識がベースとなります。

 

一方、相続・事業承継業務における税務では、それに加えて、相続税、贈与税、所得税など、複数の税目を理解し、それらにまたがる処理を行わないと、依頼者にとって最適なソリューションを提案することができません。それらの複雑度が高いことも、専門税理士以外には、相続・事業承継の業務が難しい理由です。

 

さらに、事業承継においては、税法以外に、会社法や民法、場合によっては労働法などの法務が関係してくることがあります。実際の法務処理は適宜弁護士や司法書士に任せるとはいえ、やはり知識がないと、最適なソリューションの提案ができないことがよくあります。

 

法人決算申告ではほとんど関係しないような業際的な法律の知識とノウハウが必要になるのです。これも、専門の税理士に任せたほうがいい理由となります。

 

③税務申告とは別に、交渉力や合意形成能力も求められること

通常の法人税の申告業務では、税理士が行う仕事は、資料をベースに計算をして書類を作成することがほとんどすべてです。

 

一方、相続・事業承継においては、それらの計算や書類作成業務に加えて、関係者との交渉や合意形成も担当税理士の重要な役割になります。

 

なぜなら、相続・事業承継では、経営者、後継者候補以外に、ご家族、少数株主、従業員、金融機関、取引先など、利害が異なるさまざまなステークホルダー(利害関係者)が関係してくるためです。

 

それらの人たちと交渉を重ねながら、適切な合意形成を図ることも、事業承継サポートをする税理士の仕事になるのです。法人税の申告業務を主にしている税理士は、こういった交渉事をしたことがなく、苦手としている場合がよくあります。

 

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