家主は何度か督促に行くも、いつも二人に会えなかった。(※写真はイメージです/PIXTA)

家賃を滞納するようになった2人暮らしの父子。「強制執行」までの経緯を、OAG司法書士法人代表・太田垣章子氏が解説します。 ※本記事は、書籍『老後に住める家がない!』(ポプラ社)より一部を抜粋・編集したものです。

「しばらくはそっと…」1ヵ月後訪ねると衝撃の結果が

心肺停止だった博さんは、病院で死亡が確認されました。いろいろと手続きもあるだろうし、家主はあまり徹さんを追い詰めるのもと思い、しばらくそっとしておくことにしました。

 

1ヵ月ほど経ったでしょうか。現地に行ってみると、集合ポストはチラシがぱんぱんで、もはや何も入らない状態です。部屋のドアは少し開いています。呼び鈴を押すと、通電しておらず音は鳴りませんでした。

 

「日下さん……」

 

声をかけながらドアをゆっくり開けてみると、室内はゴミの山。この1ヵ月でこうなったとは、とても思えません。博さんが床に臥(ふ)せっていた頃から、室内は乱雑にゴミが溜まっていたのでしょう。

 

中に徹さんはいないようだったのでドアを閉め、家主は途方に暮れました。ドアに鍵がかかっていないということは、徹さんはどこかに行ってしまったのでしょうか。

 

「私が突き放しすぎたのかもしれません」

 

相談に来られた家主は、ひどく落ち込んでいるご様子でした。お父さんが亡くなって息子さん一人になったので、滞納していることだし転居した方がいいと、親心のつもりが、徹さんを追い詰めたと悔やんでいらっしゃいました。

 

さて、これからどうしましょうか……。

 

家主は「明け渡しの訴訟手続きをお願いします」と小さな声で呟きました。

 

駐車場の車もそのままで、埃と黄砂で黒っぽい車がグレーにも見えるとのことでした。早速住民票を取得してみると、徹さんの住所は異動されず、現地のままです。住民登録を残したまま、どこかに行ってしまったのでしょう。部屋のライフラインは、博さんが亡くなる前にすでに未払いで止められていました。

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老後に住める家がない!

老後に住める家がない!

太田垣 章子

ポプラ社

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