バングラデシュ不動産法制の基礎:不動産抵当権の設定(第6回) ※写真はイメージです/PIXTA

本記事は、西村あさひ法律事務所が発行する『アジアニューズレター(2021/7/9号)』を転載したものです。※本ニューズレターは法的助言を目的とするものではなく、個別の案件については当該案件の個別の状況に応じ、日本法または現地法弁護士の適切な助言を求めて頂く必要があります。また、本稿に記載の見解は執筆担当者の個人的見解であり、西村あさひ法律事務所または当事務所のクライアントの見解ではありません。

本ニューズレターは、2021年7月9日までに入手した情報に基づいて執筆しております。

 

第1回(権原の基本的性質:https://gentosha-go.com/articles/-/32010)、第2回(権原及び権利の登録制度、譲渡の手続:https://gentosha-go.com/articles/-/32828)、第3回(譲渡の手続:https://gentosha-go.com/articles/-/33591)第4回(譲受人の法定権利、外国人の権利:https://gentosha-go.com/articles/-/34276)、 第5回(取引時に発見される法的論点:https://gentosha-go.com/articles/-/35680)に続き、第6回及び次号(第7回)は、バングラデシュ不動産抵当権(mortgage)に関する法制を取り上げます。

1.抵当権の概要

(1)総論

 

1882年財産移転法(以下「財産移転法」といいます。)によれば、抵当権の設定とは、「ローン、現在若しくは将来の負債、又は金銭債務を生じさせる契約の履行により、現在又は将来に実行される金銭の支払を担保する目的で、特定の不動産に係る権利を移転すること」と定義されています。権利を移転する者のことを抵当権設定者(mortgagor)、権利の移転を受ける者のことを抵当権者(mortgagee)、抵当権により担保される元本債権と利息債権は抵当金(mortgage-money)とそれぞれ呼びます。また、抵当権の設定に効力を与える文書は、抵当証書(mortgage-deed)と呼ばれます。

 

財産移転法によると、抵当権設定者及び抵当権者には、当該抵当権設定者及び抵当権者からそれぞれ権原を得た者も含まれます。したがって、(債務者以外の)第三者による抵当権の設定も認められています。

 

(2)種類

 

財産移転法は抵当権を6種類に分類しており、各抵当権の種類及び主な特徴は以下の表のとおりです。

 

2.抵当権の設定手続

抵当権は、抵当権設定者が抵当権設定のために抵当証書を作成することにより設定されます。財産移転法上、⑤権原証書預託式抵当権以外の抵当権については、抵当権設定者及び2名以上の証人によって署名された登録証書によってのみ効力を発生させることができます※1

 

※1 抵当権者が1972年バングラデシュ銀行令上の政府若しくは指定銀行、又は1993年金融機関法上の金融機関である場合、⑤権原証書預託式抵当権についても本文記載の方法による登録証書によってのみ効力を生じます。

 

また、1908年登録法(以下「登録法」といいます。)によると、抵当証書は、当該不動産が所在する地域の関係登録事務所に登録されなければなりません。

 

抵当証書には、抵当権設定者を委任者、抵当権者又は担保代理人(security agent)を受任者として、抵当不動産の占有及び売却等の権限を授権するための、抵当権設定者が作成した取消不能の全権委任状(irrevocable general power of attorney ,IGPA)が添付されることが一般的です。抵当証書と同様、IGPAは、登録法に基づき関係登録事務所に登録される必要があり、実務上、抵当証書と同時に登録されます。IGPAは、2012年委任状法に基づき公布され、委任状の特定の様式や作成方法を定めた2015年委任状規則が定める要件に適合していなければなりません。

 

また、債務者が1994年会社法に基づき登録された会社であり、当該会社の不動産に抵当権その他の負担を設定する場合、当該負担等の設定証書の締結から21日以内に、商業登記所に登録しなければなりません。

3.抵当証書上の黙示の合意

抵当証書に別段の記載がない限り、財産移転法上、例えば以下の条項が当該証書において黙示的に合意されたものとみなされます。

 

(ⅰ)抵当権設定者は、抵当不動産に対する自己の権原を防御し、また、抵当権者が当該抵当不動産を占有している場合は、抵当権者が当該権原を防御できるようにすること。

 

(ⅱ)抵当権者が抵当不動産を占有していない場合、抵当権設定者は、当該不動産に関して発生する全ての公課を支払うこと。

 

(ⅲ)抵当不動産が賃貸借物件の場合、賃料は、賃貸借契約に記載された条件に従い支払われること。

 

 

今泉 勇

西村あさひ法律事務所 パートナー弁護士

ヤンゴン事務所副代表

 

中島 朋子

西村あさひ法律事務所 弁護士

 

西村あさひ法律事務所 パートナー弁護士
ヤンゴン事務所副代表

2006年弁護士登録。国内案件におけるM&A、一般企業法務の経験を生かし、バングラデシュ、ミャンマー、ベトナム、インド、台湾等のアジア各地の新興国へ進出・展開する日系企業案件を担当。2012-2013年インドのKhaitan & Co法律事務所への出向、2016-2017年ホーチミン事務所での駐在勤務。2019年7月よりヤンゴン事務所副代表。2015年以降バングラデシュ関連案件にも継続的に関与。

【主な著書等】
『ミャンマーのビジネス法務』(有斐閣、2020年)、『ベトナムのビジネス法務』(有斐閣、2020年)、『ミャンマー不動産法の理論と実務』(商事法務、2020年)、『アジア進出・撤退の労務』(中央経済社、2017年)

著者紹介

西村あさひ法律事務所 弁護士

2012年弁護士登録。2017年-2019年独立行政法人国際協力機構(JICA)長期派遣専門家としてミャンマーに駐在し、知的財産裁判制度整備等、同国の法・司法制度整備支援を行う。2020年イリノイ大学ロースクール卒業(LL.M.)。西村あさひ法律事務所入所後は主にアジア関連案件に関与。

著者紹介

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   今泉 勇
   中島 朋子

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