約2ヵ月で一気に「米ドル急騰」となったワケ
ところで、この間の米ドル/円は、上方シフトする一定のレンジ内を上下動してきたという見方もできます(図表5参照)。90日MAからのかい離率で見ると、90日MAを1%上回った水準を下限、2%上回った水準を上限とした1%程度の狭いレンジを中心とした小動きが約2ヵ月続いてきたことがわかります(図表6参照)。
ちなみに、この90日MAは2日現在で109.3円程度なので、上述のレンジは110.4~111.5円程度になります。この2ヵ月で、何度かレンジを小幅にブレークすることはありましたが、それは一時的にとどまりました。その意味では、今回雇用統計発表前後のレンジ「上抜け」が一時的にとどまったのは、まさにこの2ヵ月のプライス・パターン通りともいえるでしょう。
長く続いた小動きが終わった後は、溜まったエネルギーの発散により、一方向に大きく動きやすくなります。今年1月末の102円台から、3月末にかけて約2ヵ月で一気に111円手前まで米ドル急騰となったのは、そんなメカニズムが働いたことが一因だった可能性が高いのです(図表6参照)。
そして、もう一つこの米ドル急騰相場において重要だったのは、かなりの割合で金利差からも裏打ちされたものだったということです。3月末にかけて米ドルが急騰した局面では、米金利の急騰により日米金利差米ドル優位も急拡大しました(図表7参照)。
長く続いた小動きに伴い溜まったエネルギーの発散と、米金利の急騰が合体した結果が、3月末にかけての米ドル急騰をもたらしたといえます。
当面の行方の鍵を握る「2つのポイント」は?
以上を整理すると、当面の米ドル/円の行方を考える上での鍵は、
2.米2年債利回りの動向
上記の2つではないでしょうか。
米2年債利回りは、基本的に米金融政策を反映する金利ですから、注目されている米金融緩和見直しの見通しについて、一歩前進となるまでは上昇再燃とはなりにくいかもしれません。
それまで、米ドル/円は上方シフトする1%レンジ中心の上下動が続くなら、高値から1%程度の反落をはさみながら、じりじりと上値を切り上げていく、そんな展開となる可能性が高いのではないでしょうか。
吉田恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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