「家賃滞納は普通の人が堕ちる破滅への入り口である。」……2500件以上の家賃滞納トラブルを解決してきた、OAG司法書士法人代表の太田垣章子氏。同氏は書籍『家賃滞納という貧困』(ポプラ社)のなかで、その悲惨な実態を明かしている。

父に電話をすると「お恥ずかしいことですが実は…」

これは家出かな……。直感的にそう感じましたが、ここで問い詰めても仕方がないので、このまま滞納が続けば、この先どのように手続きが進んでいくかを説明し、この日は部屋を後にしました。

 

加奈さんは家賃保証会社を利用しているため、連帯保証人がついていません。緊急連絡先に、お父さんの名前が書いてありました。緊急連絡先なので滞納額の請求等はできませんが、親御さんのお考えを聞いてみようと、気になったので電話してみました。

 

山本俊夫さん、46歳。電話をかけると、加奈さんのことがとても心配だったのでしょう。その時の様子を、一生懸命に聞いてこられました。

 

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お恥ずかしいことですが、加奈は今までも何度か家出を繰り返しています。そのたびに連れ戻すのですが、家の柱にくくりつけておくわけにもいかず、またスマホ片手に出て行ってしまう。親として、どうしたらいいのか分からない。どこから対応を間違ってしまったのか、何が正解なのか分からないのです。他の親御さんたちには、こんな悩みはないのでしょうか。

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俊夫さんの苦悩が伝わってきます。

 

昔は電話がかかってくれば、親が電話を取り次ぎ、子どもはリビングで話しました。だから当たり前のように、子どもの考えていることも交友関係も把握することができました。でも個々の通信機器で連絡をとるようになれば、親は子どもの口からしか情報を得ることはできません。思春期の難しい年齢になると、ますます溝は深まります。

 

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加奈の姉は、どちらかというと優等生。だから私たちも、子育てをこんなもんだと思ってしまったのかもしれません。だから姉とは違う加奈には戸惑ってしまって、どうしていいのか分からないのです。

 

姉は自分のやりたいことを自分から言ってきて、それに向かって黙って努力する。ところが、加奈は何も言ってこない。高校を卒業して、進学するでもなく、ちゃんと働くでもない。それでちょっと叱ったら、家を出てしまう。

 

今回の家出はいつもより長くて、連絡しても反応がないから困っていたんです。もう経済力がないこんな子に、部屋を貸さないで欲しい。あ、でもそうなると、風俗とかに行かれても困ってしまうか。居場所が分かって、とにかくホッとしました。

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家賃滞納という貧困

家賃滞納という貧困

太田垣 章子

ポプラ社

家賃滞納は普通の人が堕ちる破滅への入り口である。あなたも、明日陥るかもしれない!2200人以上の家賃滞納者と接した司法書士が明かす驚愕の実態!

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