「家賃滞納は普通の人が堕ちる破滅への入り口である。」……2500件以上の家賃滞納トラブルを解決してきた、OAG司法書士法人代表の太田垣章子氏。同氏は書籍『家賃滞納という貧困』(ポプラ社)のなかで、その悲惨な実態を明かしている。

すれ違っていた親子に和解の兆し…家賃滞納の決着は?

俊夫さんが加奈さんのことをとても心配していると伝えると、意外そうな表情をしつつもどこか嬉しそうでした。

 

「加奈ちゃんがやりたいこと、ちゃんと言ってみればいいのに」

 

そう言うと、加奈さんは黙ってしまいます。きっと自分であれこれ考えて、思いを伝えることが上手くできなかったのでしょう。加奈さんは親に遠慮して本当の気持ちを言い出せず、親は親で子どもの思いが分からなくて苛立って、そこに何度かの家出が重なって溝ができてしまったのだと思いました。

 

もっと本音を伝え合い、ちゃんと喧嘩すれば、今からだって、いい関係が築けるかもしれない、なんとかこの親子の橋渡しをしてあげなければ……。私の胸はそんな思いでいっぱいでした。

 

加奈さんの思いを俊夫さんに伝えると、何か思い出すことがあるようでした。大学に進学しなかったことを、一度だけ責めたことがあるそうです。もしかすると、たった一度のその言葉が、加奈さんの心を傷つけてしまったのかもしれません。

 

加奈さんの夢を伝えると、俊夫さんはとても嬉しそうでした。

 

「迎えに行ってきます。親子関係を修復できる最後のチャンスと思って、家に連れ戻してきます」

 

その後加奈さんは家に戻り、滞納額は本人がペットショップでアルバイトして、分割で支払っていくことになりました。念願だったトリマーの専門学校に通いだしたことも、教えてくれました。

 

本音でぶつかる。何でも言い合える。

 

些細なことだと思っていたようなことでも、ほんの僅かなボタンの掛け違いで行き違いになることもあります。「子育ての難しさ」は親なら誰でも感じたことがあるでしょう。一見問題がないように見える家庭だって、大なり小なり悩みを抱えているものです。

 

それでもかつては、家出しても行くところがなく、結局、家に戻るしかありませんでした。どんなに大げんかして出て行った子どもでも、親は受け入れる。そうやって子どもは成長し、家庭内のいざこざはいつしか笑い話になり、やがて親に感謝しながら自立していきました。

 

ところが、部屋が簡単に借りられてしまう時代になり、多くの若者たちは、安全な巣に戻ることなく迷走しています。簡単に借りられる部屋の存在によって起こっているのは、家賃の滞納という問題だけではないのです。

 

※本記事で紹介されている事例はすべて、個人が特定されないよう変更を加えており、名前は仮名となっています。

 

太田垣 章子

OAG司法書士法人代表 司法書士

 

 

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家賃滞納という貧困

家賃滞納という貧困

太田垣 章子

ポプラ社

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