「家賃滞納は普通の人が堕ちる破滅への入り口である。」……2500件以上の家賃滞納トラブルを解決してきた、OAG司法書士法人代表の太田垣章子氏。同氏は書籍『家賃滞納という貧困』(ポプラ社)のなかで、その悲惨な実態を明かしている。

入居直後に家賃滞納を始めた21歳女性…尋ねてみると

最近、若年層の家賃滞納が非常に増えています。その原因の多くは、経済的基盤がなくても、部屋が簡単に借りられてしまうことではないでしょうか。

 

年金代わりにと不動産投資をしたり、相続税対策でアパート経営に乗り出したりする家主が増えたことで、物件数は飛躍的に伸びています。そうして借り手市場となった不動産業界において、家賃保証会社の台頭により、連帯保証人なくして部屋を借りられるようになったことは、「部屋を借りる」ことのハードルを下げたのでしょう。

 

(写真はイメージです/PIXTA)
(写真はイメージです/PIXTA)

 

山本加奈さん(21歳)は、すでに4カ月も家賃を滞納していました。しかも、滞納は部屋を借りた直後から始まり、その額は30万円を超えています。このようなケースは、そもそも収入がないのが原因であることが大半です。おそらく加奈さんの場合も、年齢から察するに安定した収入源がないのだろうと予想されました。

 

このままだと将来のある若者が、滞納という借金をどんどん積み重ねてしまうことになりますから、早急に手を打たねばなりません。可能であれば訴訟手続きで追い出すということはなんとか避けたいと考え、家主から相談を受けたあと、すぐに部屋を訪ねてみました。

 

大概の滞納者は居留守を使うので、現地に赴いても本人に会えることはほとんどありません。けれども、加奈さんはすぐにドアを開けてくれました。

 

入居申込書の職業欄にはキャバクラ勤務と書かれていましたが、どちらかというと地味な印象の加奈さんは、昼間で化粧をしていないせいか、実年齢よりもだいぶ幼く見えました。

 

そしてやはり、滞納の原因は収入の不足でした。思ったほど売り上げが上がっていないようです。この先、収入が増える保証もなさそうですし、これ以上、滞納という借金を積み重ねないためにもとりあえずここは退去して、一度実家に戻ってみてはどうかと促したのですが、それは嫌だと突っぱねるのです。

 

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家賃滞納という貧困

家賃滞納という貧困

太田垣 章子

ポプラ社

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