高齢の元女性経営者が、コロナ禍における自分の老後と相続対策について思いを巡らせていました。事業は成功させたものの、独身で子どももいないため、これから先、年を取ってなくなるまでの間、周囲に迷惑をかけずにすむ方法を模索しています。どのような選択肢があるのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
「周囲に迷惑をかけたくない」と切望する元経営者
今回の相談者は、70代後半の米田さんです。米田さんは女性経営者として成功を収めた方で、多額の資産を築いています。結婚歴はなく、お子さんもいません。米田さんはこのコロナ禍において、いまはまだ心身がしっかりしているけれども、今後健康を損ねるようなことになると周囲に迷惑がかかると懸念され、いまのうちから財産の整理をしたいと相談に見えました。
米田さんの資産は、中央区の自宅マンションのほか、山手線沿いにある複数の収益物件、株、投資信託です。経営していた会社は売却し、手元には億単位の預貯金もあります。密かな趣味は株の売買です。
米田さんは5人きょうだいの下から2番目で、親と兄姉たちはすでに鬼籍です。2歳違いの妹は存命ですが、病気がちとのこと。4人いる甥姪とはほとんど交流がありません。
「私には子どももいませんし、親しくしている親族もいません。これから年齢を重ねても、だれにも頼ることができませんから、せめて人様に迷惑をかけないよう、自分の始末をしっかりつけたいと考えています」
「そのうち不動産の管理も難しくなるかもしれませんし、大好きな株もそろそろ整理しておかなければと。近いうちに老人ホームに入ろうと思って、いま資料を集めているところです」
生前に「不動産を売却→現金化」しておく選択肢もある
筆者は、米田さんの希望や思いをくわしく聞き取りました。
最近は「おひとりさま」という言葉も広く知られるようになり、これまで一般的だった、親が子どもに面倒を見てもらうという老後のスタイルばかりではなくなってきました。
周囲に手間をかけさせないという観点で考えるなら、不動産を売却して現金にしておくというのもひとつの方法です。相続税が高くなるというデメリットはありますが、扱いやすい資産にできるメリットもあります。
米田さんが心配しているように、高齢になればなるほど、不動産の契約更新や売却といった複雑な手続きはむずかしくなります。もしも認知症になると、手続き自体ができなくなるリスクがあります。
最近では、認知症対策として不動産を売却し、現金にしておく人もいます。また、相続人がたくさんいる場合、前もって現金化して分割しやすくする例も多くあります。
「私の場合は相続人が複数いるわけだから、遺産は分けやすいほうがいいわね。不動産や株を全部売ってお金にしておけば、余計な手間もかからないし」
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株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
一般社団法人相続実務協会 代表理事
一般社団法人首都圏不動産共創協会 理事
一般社団法人不動産女性塾 理事
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書86冊累計81万部、TV・ラジオ出演358回、新聞・雑誌掲載1092回、セミナー登壇677回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2025年版 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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