相続人は病身の妹と、鬼籍に入った兄姉の子どもたち
一般的に、遺産は配偶者と子どもが法定相続人になりますが、米田さんはどちらもいないため、遺産はきょうだいが相続するのが普通です。 もしも米田さんが亡くなったときにきょうだいが存命なら、きょうだいが遺産を相続することになります。米田さんの場合、妹は存命ですが、すでに亡くなっている兄姉がいるため、兄姉の相続分はその子たち(甥姪)が相続することになります。
ただし、妹は高齢で病気がちとのことですので、そこは事前準備が必要かもしれません。相続人が高齢の場合、その方が相続後すぐに亡くなってしまい、再び相続が発生する 「二次相続」の問題があります。相続税が二重にかかってしまうのを避けるため、遺言書を書いておいき、きょうだいではなく甥姪のほうを相続人にするケースもあります。
「妹の健康状態はあまりよくないみたいなの。私より先に逝くかはわからないけれど、夫婦仲もいいし子どもたちもちゃんとしてるから、あまり不安はないんじゃないかしら。だったら、あの子より子どもに遺産が行くよう、遺言書を残しておくのもいいかもしれないわね」
また、米田さんは親族が患った病気の関係で、ある福祉団体と非常に縁が深いといいます。きょうだいや甥姪だけでなく、自分が支援したい団体や、各種法人に財産を残すという選択肢もあります。
「私の父も経営者で、すごく尊敬していました。父が日本でもまれな難病を患ったときは本当につらくて悲しくて。でも、この福祉団体の方々が、すごく力になってくださったんです。父は助かりませんでしたが、少しでも今後の運営のプラスになったらうれしいです」
相続対策としての「養子縁組」のメリット
相続人が配偶者や子どもの場合、法律上、一定の相続財産が保障されています。これを遺留分といいます。全体の遺留分として認められるのは遺産の2分の1です。たとえば、法定相続人が配偶者と子ども1人の2名だった場合は、配偶者と子の法定相続分はそれぞれ2分の1です。全体の遺留分である遺産の2分の1から、さらに半分ずつに分けるということになり、配偶者には遺産全体の4分の1、子どもにも遺産全体の4分の1が分配されることになります。 しかし、相続人がきょうだい(きょうだいが亡くなっているなら甥姪)の場合は遺留分がありません。
相続では、まず優先されるのは配偶者、 次に直系卑属(子どもや孫)です。配偶者や子どものない方のなかには、相続対策としてきょうだい(甥姪)と養子縁組する人もいます。ただしその場合、相続トラブルに留意しなければなりません。複数のきょうだいがいる場合、養子になったきょうだいと、ならなかったきょうだいの間で、しばしば諍いになるからです。
「私の場合、特別に親しくしている甥姪はいないから、だれかとだけ養子縁組というのは考えられないですね。そうするとやっぱり、近いうちに不動産やら株を売却して、現金化しておいたほうがよさそうね。私が亡くなったあとは、甥姪たちと父がお世話になった福祉団体にお金が行くよう、遺言書を残そうかなと思います。財産の売却のタイミングと、遺言書の作成は、近いうち相談に乗ってください」
米田さんは経営者らしく、あっという間に結論を出しました。
※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。
曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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