子ども時代の兄弟姉妹の関係性は、成人後も大きく変わらないものなのでしょうか。母親の遺産相続時にチャッカリした姉に出し抜かれ、悔しい思いをした妹は、遠くない将来起こるであろう父親の相続でも、同様の展開が待ち受けていそうな気配を感じ、戦慄します。どのような対策を立てたらいいのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
80代ひとり住まいの父親が倒れ、介護施設へ
今回の相談者は、60代専業主婦の三井さんです。高齢の父親の資産管理と相続について、不安があるとのことです。父親は80代後半で、10年近く前に母親が他界して以降、ひとり暮しをしていました。ところがつい先日、かくしゃくとしていた父親が脳梗塞で倒れ、半身付随となってしまいました。いまは介護施設に入所しています。
三井さんは2人姉妹で、3歳年上の独身の姉がいます。三井さんは短大を卒業後、数年の会社勤めを経て結婚しました。以後はずっと専業主婦です。姉は美容専門学校を卒業後、いくつか勤め先を変え、20年前から実家そばで小さな美容院を営んでいます。固定客もつき、長年働いているパートのスタッフとともに地道に仕事をしています。
堅実に暮らしている三井さんの姉ですが、三井さんは姉の行動に不信感を持っています。
「もとはといえば、7年前に母親が亡くなったときのことが原因なんです。うちの母親は、祖父から相続した貸家をもっていました。父親名義の自宅よりもずっといい場所にあって、毎月入ってくるお金も大きいんです。母親が亡くなったとき、相続手続きはほとんど父親がやったのですが、どういうわけだか姉に有利な形になっていて、母が持っていた貸家は、父ではなく姉が相続したんです」
三井さんはその際、やはり母親所有の別の土地を相続していますが、実家から遠く、行ったことすらない場所で、現在も空き地のまま放置しています。いま家族で暮らしている自宅からも遠く、今後家を建てて住むことも考えられません。
姉が相続した貸家の評価額は三井さんが相続した土地の10倍以上で、毎月家賃も入ります。しかし、三井さんの土地は収益がないどころか、固定資産税と草刈代がかかります。同じ姉妹なのにこれだけの違いがあることを、相続終了後に知ったのでした。
三井家の資産状況をさかのぼって確認すると、下記の通りになります。
母親名義の貸家…約4000万円(姉が相続ずみ)
母親名義の土地…約350万円(三井さんが相続ずみ)
父親名義の実家…約2500万円
父親の預貯金・有価証券…合計3000万円程度
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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