収容先から来た一通の手紙…「お願いがあります」
「正直、早く家から独立して欲しいと思っていました」
郁夫さんから、雄一さんに対する不満は、次から次へと湧き出して止まりません。雄一さんのことがなければ、校長にだってなれたのに。その悔しさが、言葉の端々ににじみます。
郁夫さんご夫婦は、この20年ちょっとで、15回近く引越しと転職を繰り返してきました。その理由が雄一さんだと言います。
犯罪を繰り返して刑務所に入った雄一さんが、出所すると行く場所がないので郁夫さんのところに戻ってきます。戻ってきてもおとなしくしておらず、家で郁夫さんたちに不満をぶつけて派手に暴れるので、ご近所に雄一さんの素行が知られてしまうのです。そうなると郁夫さんたちは、いたたまれません。犯罪者の家族として、常に近所の目を意識して逃げ回ってきました。雄一さんが刑務所に入っている間だけが、唯一、郁夫さん夫妻の心休まる期間なのでしょう。
郁夫さんの口からは、苦労をかけられっぱなしの雄一さんに対する不満が次から次へと湧き出します。もちろん大変な思いをされてきたことは十分に理解できるのですが、ただ私にはとても引っかかることがありました。
郁夫さんが話すのは、雄一さんの素行によって、自分たちが世間からいかに冷たい評価を受けてきたか、どれだけ辛い思いをしてきたか、という話ばかり。息子である雄一さんに、その目が向いているようにはどうしても思えなかったのです。もしかすると、そこに雄一さんが小さい頃から問題を起こし続けている理由が隠されているのかもしれない。そんなふうに思わずにはいられませんでした。
これほどまでの不満がある中で、郁夫さんに「親」の立場で雄一さんの部屋の明け渡しの協力をお願いすることはできません。仕方なく、明け渡しは粛々と手続きで進めることになりました。
ちょうど裁判が結審した頃、収容先の雄一さんから事務所にお手紙が届きました。
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前略 このたびはお世話になります。ご迷惑をおかけし、申し訳ございません。太田垣さんに、一つお願いがあります。同居している沙織の転居先を探すためにご協力いただけませんか? 沙織はこんな自分を、唯一受け入れてくれた女です。自分は、本来なら見捨てられてもいいような男ですが、沙織は出所するまで、待っていると言ってくれています。ありがたい話です。
ただ沙織ひとりでは部屋を見つけることができないと思いますので、なんとか力を貸してやってください。
ご迷惑をおかけしている上に、このようなことまでお頼みして申し訳ございません。
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