「家賃滞納は普通の人が堕ちる破滅への入り口である。」……2500件以上の家賃滞納トラブルを解決してきた、OAG司法書士法人代表の太田垣章子氏。同氏は書籍『家賃滞納という貧困』(ポプラ社)のなかで、その悲惨な実態を明かしている。

2週間経ち「明け渡し当日」…そこに、父の姿は

そこから2週間ほどして明け渡しの判決が言い渡された頃、沙織さんは勤め先の社長が連帯保証人になってくれた部屋に引越しをしていきました。

 

国選弁護士も、立ち会ってくれました。でもそこに郁夫さんの姿はありませんでした。

 

自分の感情を上手にコントロールできない子どもの頃に道を踏み外してしまったことで、なかなか本来の道に戻れぬまま大人になってしまった雄一さん。本人はがんばろうとしても、世間からも、そしていちばん大切な家族からもどこか冷めた目で見られてしまうことのやるせなさが、雄一さんを薬物に走らせてしまったのかもしれません。唯一、心を許した沙織さんの優しさをもってしても、親に愛されたかったという心の溝は埋められなかったのでしょうか。

 

今度こそ、沙織さんとふたりで、心穏やかに暮らしていって欲しい、心からそう思いました。

 

※本記事で紹介されている事例はすべて、個人が特定されないよう変更を加えており、名前は仮名となっています。

 

太田垣 章子

OAG司法書士法人代表 司法書士

 

 

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家賃滞納という貧困

家賃滞納という貧困

太田垣 章子

ポプラ社

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