相続人は「子のない兄」と「独身の弟」だけ
今回の相談者は、60代の福田さんです。昨年亡くなった母親の相続の件で相談に見えました。福田さんの父親は10年前に亡くなっており、相続人は福田さんと独身の弟のふたりです。
前回の父親の相続では、相続税の負担を減らすためにすべて母親が相続していました。長男の福田さんはこれまで生家を出たことがなく、30代で結婚してからも二世帯で同居してきました。子どもには恵まれませんでしたが、家族全員で円満に暮らしてきたといいます。
弟は大学卒業後に家を出ていますが、勤務先の近辺に母親が保有していたマンションがあり、そこにひとりで暮らしています。そういった経緯から、実家を相続するのは長男の福田さんになるとのことです。
そのほかの財産として、両親の収入源となってきたアパート、貸し宅地、あとは現預金があります。
遺産分割については、弟との間に暗黙の了解のようなものはありますが、母親が遺言書を残さなかったため、遺産分割協議をしなければなりません。福田さんは自宅の土地建物、弟には現在暮らしているマンションを渡すつもりですが、それ以外の財産をどうするか決めかねている状況です。
広すぎる自宅、古すぎるアパート、面倒な貸し宅地…
いちばんの問題は、自宅もアパートも築40年ほど経っており、老朽化していることでした。また、自宅近くに貸し宅地がありますが、地代も安く、借地人とのやりとりもわずらわしくなっていました。こうした状況での相続ですので、相続税が払えるのか、弟との遺産分割をどうしようかと不安ばかりです。
母親の残した預金では、相続税を支払うと現金がまったく残らない状況です。現金を残すことを考えると、土地の一部を売らないといけません。
相続税と弟への分割金を捻出するには、貸し宅地のある土地を半分程度は売ることになってしまいます。しかし、この土地は奥に長い長方形であり、2分割すると奥が旗竿地になってしまいます。
また、自宅とアパートは古い木造のため、これから修繕費がかかりそうです。自宅の建物は40坪近くあり、福田さん夫婦だけで住むには広すぎることも懸念点です。
そして、アパートが立つ土地も旗竿地の不整形地です。現況のままでは売れません。
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