親から相続した不動産を、形を変えずに持ち続けようとする相続人は多いのですが、そのために多額の相続税が必要になったり、その後も固定資産税や維持費が発生するなど、「負動産化」する例は枚挙にいとまがありません。すべて売却し、組み替える思い切りも重要です。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
一部を切り売りするより、すべて売却したほうが効率的
福田さんが自宅を相続して守っていく、いままでの一般的な相続の仕方はつぎのような方法が考えられます。
①敷地の一部を売却して相続税を支払う。
②弟に代償金を払うため、①の相続税分と合わせて土地を売却し、代償金は財産の30%程度で了解してもらう。
③自宅とアパートを解体し、賃貸併用住宅を建てて維持する。
福田さん夫婦には子どもがなく、弟さんも独身です。これから30年の借り入れをして100坪以上の土地を残しても、現在では、次世代に継承する人が想定できないため、将来の不安が残ります。
また、自宅と賃貸住宅は別棟にしたほうがわずらわしさは軽減するのですが、福田さんの土地は間口よりも奥に深い地形です。そこに2棟の建物を建てると、手前が自宅、奥がアパートとなり、日当たりや通路に難が出ます。ならば1棟にして賃貸併用住宅のほうがコストも間取りも効率はよいとなりますが、そうなると、静かで落ち着いた生活が望みにくくなります。
筆者が調査した結果、自宅の敷地の一部を売却する場合と、全体を売却する場合を比較すると、全体を売却したほうがかなり高く売れることがわかりました。
土地をすべて売却、資産の組み替えを実施
福田さん兄弟の状況や財産の内容などを総合的に判断して提案したプランは、自宅とアパート、貸し宅地をすべて売却して自宅を住み替え、アパートから区分マンションへ変える方法です。
自宅は、母親と同居してきた福田さんが相続して売却すると、3000万円控除の特例を生かすことができ、相続税の取得費加算も使えます。試算したところ、その方法を取ると、弟には住んでいるマンションのほか、売却代金のなかから代償金として5000万円を渡すことができそうでした。
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株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
一般社団法人相続実務協会 代表理事
一般社団法人首都圏不動産共創協会 理事
一般社団法人不動産女性塾 理事
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書86冊累計81万部、TV・ラジオ出演358回、新聞・雑誌掲載1092回、セミナー登壇677回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2025年版 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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