先物取引は、リスクの高い投資の方法で有名です。しかし、米にかかわる事業の方々は「リスクを回避するため」に、お米の商品先物市場を活用する場合があります。その理由を、三次理加氏の『お米の先物市場活用法』(時事通信出版局)より、一部編集・抜粋し、説明します。

農家や業者の抱えるリスクは先物市場で解決できる?

農家や業者の皆さんは、さまざまなリスクを抱えながら経営を行っていらっしゃると思います。これらのリスクとリスクヘッジ(回避)方法について、[図表1]をご参照ください。実にたくさんのリスクがありますが、これらのリスクは、大きく二つに分類することができます。それは、「純粋リスク」と「投機的リスク」です。

 

[図表1]企業を取り巻くリスクとリスクヘッジ方法
[図表1]企業を取り巻くリスクとリスクヘッジ方法

 

「純粋リスク」とは、それが発生するとコストや損失が発生するリスクを意味します。言い換えれば、「潜在的損失を有している」リスクです。たとえば、地震や台風などの自然災害、火災、事故、製造物賠償責任などが該当します。

 

これらのリスクは、[図表1]にある通り、保険をかけることにより回避することができます。リスクを保険料というコストに転嫁することで回避できる、ということです。一方、「投機的リスク」の代表的なものは、「価格変動リスク」が挙げられます。それが発生すると、利益になることも、逆に損失となることもある類のリスクです。

 

つまり、「投機的リスク」は、「潜在的利益・潜在的損失の双方を内包する」リスクといえるでしょう。「価格変動リスク」は、先物市場などを利用して第三者にリスクを移転することにより回避することができます※。

 

ただし、潜在的損失を回避するということは、同時に潜在的利益の可能性も消失します。米の生産・流通には、過剰作付・過剰在庫リスク、天候リスク、消費者の消費量や消費性向の変動リスク、価格変動リスクなど、さまざまなリスクがあります。

 

ご承知の通り、米に関して、国が生産から流通まですべてを管理していた時代は終焉を迎えようとしています。農家など生産者は、主体的に判断することが求められ、すでに自由化された流通に関わる業者は、柔軟な販売戦略で事業を運営する必要があります。

 

以前に比べ、米の「価格変動リスク」は高まっているといってよいでしょう。農家などの生産者、流通・加工に関わる業者の「投機的リスク」を回避できる場、それが大阪堂島商品取引所に上場される「米先物取引」市場なのです。

※保険デリバティブ商品などの登場により、リスクを保険料というコストに転嫁できるものもあるようです。

 

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お米の先物市場活用法

お米の先物市場活用法

三次 理加

株式会社時事通信出版局

先物取引といえば、ハイリスク・ハイリターンな資産運用、投機というイメージが強い。一方、生産者、集荷業者、卸売業者、飲食業者等の立場で先物市場を利用する場合には、次のようなメリットがある。 1価格変動のリスクヘッ…

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