お米農家が「商品先物取引」を活用するワケ
商品先物取引における「価格変動リスクのヘッジ機能」には、「換金・金融機関機能」「実物取得機能」「在庫調整機能」という三つの補完的な機能があります。
1.「換金・金融機関機能」
手元にある米を米先物市場で売却し、換金することができます。米価格の価格が下がると予想し、「売りヘッジ」をした場合、売り先が見つからなかったときには、そのまま現物を先物市場に売り、代金を回収することができます。
ここで非常に大切なポイントは、大阪堂島商品取引所を介した取引となるため取引先の与信判断*1は不要であるということです。代金未回収のリスクはありません。また、米国では、農場経営者や穀物取扱業者などが穀物在庫の価格変動リスクを商品先物市場でヘッジしている場合、銀行が、その在庫の一定割合までの融資条件を緩和することがあるそうです。
これは「ヘッジしていない商品在庫は投機」【引用:『商品先物取引の基礎知識』(時事通信社)という考えからくるようです。
あまり知られていないようですが、日本においても、動産を担保に金融機関が融資する制度があります。これをABL(アセット・ベースト・レンディング、動産・売掛金担保融資)といいます。
これは、在庫や売掛金等を活用する資金調達の方法です。商品を販売し、販売代金が売掛金となり、売掛金が回収されて現金預金になる、という「資金の流れ」に着目し、販売・売掛金・現金預金を一体として担保設定するものです[図表1]。
不動産担保や個人の信用に過度に依存せず、事業者の資金調達の多様化や地域の活性化につながる制度として注目されています。地域金融機関の融資の9割超が不動産担保であることを踏まえ、金融庁は、2013(平成25)年に、積極的活用を推奨しています。
米に関しては、北日本銀行が米卸業者に1億円、北越銀行が米集荷業者に5000万円のABLを実行した事例があります。ただし、ABLは、担保となる動産について合理的評価が必要です。大阪堂島商品取引所に上場されている米先物市場は、明確で即時性の高い価格指標ですから、米在庫の適正な資産評価が可能となります。
つまり、米在庫を担保に、金融機関から借り入れを行うことができるようになる可能性が高まります。
*1取引先の経営状況などを調査し、取引相手としてリスクがないか判断すること。
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