商品先物取引の役割…福沢諭吉が解説?
読者の皆様は、商品先物市場の役割をご存じでしょうか? 株式市場であれば、企業が資金調達を行う「直接金融」機能、株価により常に時価評価を把握することができる、企業価値の表示機能、資産運用機能の三つがあることは、周知のことだと思います。一方、商品先物市場の機能については、あまり知っている方はいらっしゃらないでしょう。
では、実際のところ、商品先物取引は、経済・社会的にどのような存在意義・役割があるのでしょうか? 商品先物取引の機能については、福沢諭吉がその論文の中で明快に説明しています。
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相場會所※は一國(いっこく)の殖産(しょくさん)商売のために無害無益なるものか、有害無益なるもの歟(か)、又は有益無害なるもの歟と、三様に問題を設けるときは、我輩は断じて有益無害なりと答える者なり─中略─凡そ今の欧米文明の諸国に相場會所あらざるはなくして、其効用を問へば、弊害を説く者は少なくして利益を語る者は多し。※大阪の堂島米会所のこと
抑(そもそ)も相場所の効用は、近遠の物価を示し、其現在未来の高低を明にし、生産物の運転を活発にし、以て農工商をして安んじて其業に従ふを得せしむるに在り。交通運輸の自在なる文明の世に居り、正当普通の物価を知らずして、物を製造し物を売買して能く禍を蒙(こうむ)るなきを得べきや。
地方の養蚕製糸家が、外国の市場、横浜貿易上の相場に暗くして、安んじて業を執る可きや。北国の米商が東京今日の米価を聞いて廻米を企て、東京湾着船の時に価格の下落することあらば如何す可きや。其危険は楫(かじ)なき船に帆を揚げて大海を航るに異ならず。然るに今その楫を授けて行かんと目指す處(ところ)に行かしむるものは相場所の功徳と云ふ可し。
又商売は其価の高き處に集り来りて、其低き處より散じ去り、以て一国内の各地、世界中の各国に、物価の乱高下を防ぎ、以て経済の円滑を得せしむるの通則は、争ふ可らざるの事実なり。
而(しか)して此通則に一層の活動を興(おこ)へて、人民に恆(つね)に産を得せしむるものは、是亦(これまた)相場所の効力なりと云はざるを得ず
『福沢諭吉全集』第11巻 慶應義塾編纂 岩波書店(1960年)
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福沢諭吉は、商品先物取引の効用について「現在と未来の価格を示し、生産を活発にし、農業・工業・商業に携わる人々が安心して仕事をすることができるようになる」点にあると挙げ、商品先物取引について「絶対に有益無害である」と主張しています。
また、取引所がない中で商売を行うことを「櫂がない船に帆を上げて、大きな海を航海しようとするようなものだ」とたとえています。
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